アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)の株価が、52週高値187.28ドルから44%下落する異例の展開を見せている。背景には、AI分野でNvidiaが圧倒的な市場支配力を誇るなか、AMDが期待されたシェア拡大を果たせなかったことがある。加えて、CPU市場におけるマクロ経済の逆風や通年収益見通しの未達も重なり、株価への圧力が増している。
一方で、同社のデータセンター部門は前年比94%増の126億ドルという急成長を遂げ、AI向けGPU「MI300X」や「EPYC」プロセッサの採用拡大が牽引力となっている。さらに、Silo AIの買収や次世代GPU製品群の投入計画を通じて、AI演算性能の強化を進める構えだ。
ウォール街では「Moderate Buy」の評価が下されており、AIインフラ需要の追い風を受けた株価反発の可能性が注視される局面にある。
AI分野での劣勢とデータセンター事業の急伸が交錯するAMDの現在地

AMDはAI分野において、Nvidiaに対する劣勢が鮮明となっている。特に、NvidiaがハイエンドAIチップ市場で独占的な立場を築いていることにより、AMDは大規模案件の受注競争で後塵を拝しているのが現実である。これが株価に対して大きな下押し圧力として作用し、52週高値から44%の下落という厳しい状況を招いた。加えて、2025年の通年見通しが市場の期待を下回ったことも、投資家のセンチメント悪化に拍車をかけた。
しかし、AMDのデータセンター事業は対照的な躍進を見せている。2024年の部門収益は前年比94%増の126億ドルを記録し、「Instinct MI300X」GPUと「EPYC」サーバープロセッサが成長を牽引した。クラウドおよびAI基盤を支える基幹インフラとしての採用が進んでおり、大手ハイパースケーラーやOEM、ODMとの連携も拡大中である。この成長がAMDの業績に新たな重心をもたらしつつあり、株価回復の布石ともなり得る。
現在のAMDは、AI主導の競争では後れを取っているものの、データセンター分野の急拡大が企業全体を再定義しつつある。短期的な株価の低迷は否めないが、インフラ需要の拡大を背景に、再評価の余地は十分に残されていると言える。
GPUとCPU両軸による戦略展開が中長期の鍵を握る
AMDはGPU領域での巻き返しを図るべく、次世代製品「MI325X」や「MI350」シリーズの投入を計画しており、さらに「MI400」シリーズの開発も進行中である。これらの製品群はAIの学習・推論の両方に対応し、性能面での飛躍が期待される。また、ROCmソフトウェアスタックを中心としたソフトウェア基盤の拡充にも注力しており、ハードとソフトの融合によってエコシステム全体の最適化を図っている。
同時に、CPU分野でもEPYCシリーズを軸としたサーバー向け戦略が奏功しつつあり、データセンター用途での評価が高まっている。特に第5世代EPYCの登場は、クラウド環境におけるパフォーマンスとコスト効率の両立を実現し、競合との差別化に寄与している。PC市場の回復傾向やAI対応PCの普及も追い風となっており、汎用CPU市場でも成長余地がある。
AMDはGPUとCPUという二つの柱を通じ、AIおよびクラウドの中核インフラを形成する企業への変貌を目指している。その成否は、製品開発力のみならず、開発者との連携やパートナー戦略の巧拙にも大きく左右される。いかにしてNvidiaとの差を埋め、持続的な成長軌道に乗せるかが中長期的な焦点である。
Source:Barchart