成長株投資で知られるArk Investのキャシー・ウッドが、市場の下落局面においても攻勢を強めている。彼女はテスラ、イリジウム・コミュニケーションズ、インテリア・セラピューティクスという、いずれも直近で大幅に値を下げた3銘柄を買い増した。

テスラは昨年の失速により株価が半減したが、新型車やロボタクシー事業などで成長再加速への期待が再燃。イリジウムは収益見通しが控えめながら、通信衛星の安定需要が背景にある。インテリアは株価が5年で96%下落したものの、遺伝子治療薬のパイプラインに再評価の兆しが出ている。

市場の悲観が色濃くなるなか、ウッドの動きはこれら企業が持つ成長の地力に対する逆張りの姿勢を示している。投資家心理が冷え込む局面でこそ注目すべき選好が垣間見える。

テスラ株再評価の兆しと成長戦略の鍵を握る製品群

テスラの株価は、2023年末の高値からおよそ3カ月で半値以下となった。背景には、CEOイーロン・マスクの政治的発言が招いたブランドイメージの毀損、そして売上成長の鈍化がある。2023年度は、10年以上続いた2桁の増収が途切れ、業績は停滞を見せた。さらに直近4四半期のうち3度も市場予想を下回る決算が続いたことで、投資家の期待は冷え込み、株価の下落に拍車がかかった。

しかし市場には反転の兆しが見える。カンター・フィッツジェラルドのアンドレス・シェパードは、テスラの格付けを「中立」から「強気」に引き上げ、目標株価を425ドルと据え置いた。現在の株価水準から見れば、およそ80%の上昇余地があるとされる。この評価を後押ししているのが、第2四半期に投入予定の低価格モデル、自動運転車による新事業「サイバーカブ」、そして将来的な家庭用ロボット「オプティマス」の市場投入である。

これらの製品群は、既存事業の成長鈍化を補完するだけでなく、新たな収益源としての位置づけを担う可能性がある。ただし、事業化には技術的ハードルと規制上の課題が残る。成長再加速を前提とするならば、製品投入のスケジュールや機能の進化が計画通りに進行するかが今後の焦点となる。

 

イリジウムに見る防御型資産の限界とARKの積極買いの背景

イリジウム・コミュニケーションズは、音声およびデータ通信の衛星サービスを展開する企業で、250万件を超える契約者数を有する。直近の成長率は前年比8%と安定感はあるが、過去6年間で2桁成長を記録したのは1度のみであり、2025年もその傾向が続く見通しである。売上の柱であるサービス収益も、今年のガイダンスで5%〜7%成長にとどまるとされている。

加えて、競合環境の激化が成長の足かせとなっている。バークレイズのマチュー・ロビヤールは、競争を理由に目標株価を引き下げたものの、基本的な投資判断は強気を維持している。イリジウムの株価は年初に20%上昇したが、その後急落し、昨年初頭の水準からは3分の1に落ち込んだ。これらの数値は、同社が通信インフラとしての安定感を持ちつつも、成長性に課題を抱えていることを示唆している。

その中で、ARKのウッド氏は今週の最初の4営業日連続でイリジウム株を買い増している。これは、短期的な市場の懸念よりも、長期的な通信需要やインフラ整備の持続性に投資価値を見出している姿勢と見られる。市場が悲観的に評価する局面においても、通信衛星という地政学リスクへの対応力を備えた分野に対しては、買いの動きが強まる余地がある。

 

CRISPR技術を軸としたインテリア株の急落と可能性

インテリア・セラピューティクスは、CRISPR技術を活用した遺伝子編集治療に取り組むバイオ企業である。同社の株価は過去5年間で96%下落しており、かつて200ドルを超えていた水準は現在、1桁台後半に沈んでいる。株価の大幅下落は、同社が扱う疾患が希少かつ難治性であり、市場規模が限定される中で商業化が進まなかったことに起因する。

ただし、今月初めにウェインライト社のミッチェル・カプールがカバレッジを開始し、同社株を「強気」と評価、目標株価を30ドルと設定した点は注目に値する。彼が評価対象とした「NTLA-2002」は、一回限りの投与で長期的な効果が期待される治療候補であり、現行の慢性治療法に代替する可能性を秘める。さらに、トゥルイスト社のジュン・リーも株価目標を50ドルに引き下げつつも、強気姿勢を崩していない。

現在の株価水準を基準とすれば、30ドルでも3倍超、50ドルになれば6倍の上昇余地がある計算になる。ただし、実際の上市には臨床試験の成否や規制承認の進捗が前提となる。現段階では不確実性が残るものの、ウッド氏がこの分野への投資を継続していることは、次世代医療への構造的な期待と、それを担う企業群への先回り的投資としての意味合いを帯びている。

Source:The Motley Fool