ARK Investment Management創業者のキャシー・ウッド氏が、ミームコインの急増に対して強い警戒感を示した。Bloombergのインタビューで同氏は、数千のミームコインが乱立し、その多くが数時間で無価値になると指摘。ブロックチェーンやAI技術がかえって粗悪なトークンの生成を助長しているとの見解を示した。

同氏は、現在ミームコイン市場の時価総額が530億ドルに達していることに言及しつつも、真に価値を持つプロジェクトは極めて限られると強調。ドージコインなど一部を除き、多くは投機対象であり、規制当局も責任を取らないと警告した。

一方で、「TRUMP」コインのように将来的にデジタルコレクティブルとなる可能性も示唆するなど、一部の例外的存在には残存の可能性を認めたが、原則として同氏はミームコインへの投資に慎重姿勢を崩していない。

ウッド氏が警鐘を鳴らす背景 ミームコイン急増とその本質的リスク

キャシー・ウッド氏が警告する背景には、ミームコイン市場の過熱とその質の低下がある。現在、時価総額は530億ドルに達しながらも、上位100プロジェクトに該当するものはわずか5つに過ぎない。この数字は、市場参加者の関心が急速に高まっている一方で、投資先としての精査が十分に行われていない現状を浮き彫りにする。ウッド氏は、数千に及ぶトークンが短期間で生成され、その多くがわずか数時間で価値を失っていると語った。

さらに、ブロックチェーンと人工知能といった先端技術が、皮肉にも粗製乱造を可能にしているという指摘は看過できない。こうした技術は本来、透明性と信頼性を提供するものであるはずだが、現状ではむしろ規制の目が届かない中で、無価値な資産の温床となっている。ARKインベストはこのような市場動向に対し、一切ミームコインへの資金投入を行っていないと明言しており、その姿勢は一貫して慎重である。

加えて、米証券取引委員会(SEC)をはじめとする規制機関が、ミームコインを証券とみなしていない現状は、投資家保護の観点からも懸念を呼ぶ。ウッド氏の言葉を借りれば、「人々は実際に損失を出すことで学ぶ」のであり、規制当局はその損失に対して責任を負わないという冷徹な現実が横たわっている。

 

デジタルコレクティブル化の兆しと残存価値を持つミームコインの可能性

キャシー・ウッド氏が全てのミームコインを否定しているわけではない点は注目に値する。特に「TRUMP」のような特定のトークンは、ミーム性に加えて象徴的・文化的価値を帯びており、将来的にはデジタルコレクティブルとして一定の地位を築く可能性が示されている。この「TRUMP」は価格こそ期待通りに推移していないが、他のミームコインとは異なる文脈で評価されつつある。

こうしたトークンに共通するのは、単なる話題性や一時的なバズに依存せず、継続的な支持層や認知的資産としての性格を持つ点である。ウッド氏の発言に照らすと、「TRUMP」のようなコインは時代の記号としてアーカイブされ、価値の保存媒体として再評価される余地を持つ。これは、NFTやデジタルアートに類似した役割を担うことを意味する。

とはいえ、こうした例外的な存在はごくわずかに留まる。市場の大半を占めるトークンは、経済的価値の裏付けを欠き、価格変動に極端に依存しているため、資産としての持続性には乏しい。ウッド氏が繰り返し指摘するように、投資家が認識すべきは「価値があるかではなく、残るかどうか」であるという視点に他ならない。

 

投資家保護と規制の空白 SECの沈黙がもたらす構造的リスク

ウッド氏の指摘の中で最も重いのは、規制当局による明確なスタンスの欠如である。ミームコインはSECなどから証券と見なされておらず、現時点で明確な法的枠組みも適用されていない。これは、投資家が損失を被った際に法的な保護を受けられないことを意味し、市場の健全性に深刻な影響を与える可能性がある。

加えて、こうした規制の不在が新たなミームコインの乱立を助長している。開発者はコンプライアンスや財務的健全性を考慮せずとも市場参入が可能であり、結果として不透明なプロジェクトが大量に出回る構造が温存されている。これにより、信頼性を欠いたトークンが市場の大半を占め、誤認に基づく投資が常態化している。

この状況は、仮想通貨市場全体の信用にも影響を与える。ウッド氏は、実際に資金を失うことで投資家が学ぶと述べたが、それは本来、事後的な対応であってはならない。健全な市場形成には、早期の規制整備と明確なルール作りが不可欠であり、SECを含む監督機関には迅速かつ透明性のある対応が求められている。

Source:Bitcoin News