Appleが生成AI機能「Apple Intelligence」の広告で、改良版Siriの即時提供を強調したにもかかわらず、実際には2026年に延期されたことを受け、米カリフォルニア州で集団訴訟が提起された。訴訟はサンノゼの連邦地裁に提出され、広告が消費者に誤解を与え、プレミアム価格での端末購入を促したと主張。
iPhone 16シリーズをはじめとする新型端末とAI機能の「同時展開」が事実と異なる点が問題視されている。原告側はGoogleやOpenAIへの訴訟経験を持つClarkson Law Firmで、広告の広範な影響力とAppleの市場戦略への疑義を指摘。特に、非対応とされたiPhone 15/15 Plusの購入者の不満が高まっている。
広告と実態の乖離が招いた訴訟の構図

AppleがBella Ramseyを起用して公開したApple Intelligenceの広告では、革新的なSiriの即時利用が示唆されていた。しかし、同機能は2026年まで提供されないことが判明し、広告は後に削除された。この表現の落差が、虚偽広告による誤認を招いたとする訴訟の核心となっている。訴状は、Appleが消費者に「合理的な期待」を抱かせ、高価格の新製品購入へと誘導したと主張している。
訴訟は2025年3月にサンノゼの連邦地裁へ提出され、提訴を行ったClarkson Law FirmはAI関連訴訟で実績を持つ。対象となるのは、Apple Intelligenceと互換性を有するとされたiPhone 16シリーズをはじめとするデバイス群である。実際には、Apple Intelligenceの恩恵を受けられないまま購入したユーザーが多く、その不満が訴訟に結びついた。
広告の影響はインターネット、テレビを通じて広範囲に及び、「発売と同時にAI機能が使える」という期待が生まれていた。この点において、Appleが市場の熱狂を戦略的に活用した可能性もある。ただし、技術的な準備不足や社内の方針転換といった背景も考慮すべきであり、単なる意図的誤認とは断定しがたい構図が見える。
対応端末の限定がもたらす購買者の分断と不満
Apple Intelligenceは高性能なNeural Engineと十分なRAMを要件とし、iPhone 15やiPhone 15 Plusは非対応とされた。これは、機能発表からわずか1年後の対応可否判断であり、近年端末を購入した利用者にとって大きな落胆をもたらしている。Apple製品は長期利用を前提に投資される傾向が強く、今回のように最新技術の対象外とされる判断は、信頼を揺るがす要素になり得る。
iPhone 16シリーズは、Apple Intelligenceの中核機能を享受できる数少ない機種とされたが、広告により「全ての新型iPhoneで利用可能」と誤解される余地があったとされている。これにより、非対応モデルを購入した消費者からは不公平感が噴出し、購買判断の根拠が崩れた格好だ。
こうした対応方針は、Appleがハードウェアの更新サイクルを促す一方で、既存ユーザーの満足度とのバランスを崩す可能性を孕む。AI競争の加速と差別化戦略の一環としては理解できるが、顧客基盤の維持という観点ではリスクの高い選択と映る。今後の端末展開において、機能対応の明確なガイドライン提示が求められよう。
Source:Wccftech