GoogleはPixelスマートフォンのGPU性能を、四半期ごとのアップデートやドライバー刷新を通じて大幅に向上させている。特に注目すべきは、Pixel 7aがGeekbench 6で従来比62%のスコア向上を記録し、Pixel 8や9も30%超の性能向上を見せた点である。
これらの改善は、主にVulkan API対応のゲームや高負荷アプリで実感でき、GPUドライバーの最適化が実質的なフレームレートの改善や機械学習処理の効率化に繋がっている。Tensor G3 GPU向けの新カーネルドライバーも、ゲーム体験を飛躍的に高めている。
発売後も性能を高めるGoogleの姿勢は、競合との差を縮めながら、ハードウェア刷新を待たずとも快適さを享受できるという選択肢を広げている。
GPUドライバーの刷新がもたらした驚異的なスコア向上の実態

Googleは2023年12月のアップデートで、Pixel 8に搭載されているTensor G3向けに新たなMali GPUカーネルドライバーを投入し、ゲームやグラフィックス処理での性能を大きく引き上げた。これにより、Pixel 7aはGeekbench 6におけるVulkan APIスコアで従来比62%の向上、Pixel 8および9ではそれぞれ31%と32%の向上が記録された。このベンチマークは高負荷なゲームや機械学習処理を行うアプリにおける実用性を測る指標でもあり、数値以上の体感差が期待できる。
このGPU強化は最新機種に限定されず、Pixel 7シリーズのような2022年発売のデバイスにも反映されている点が特徴的である。一般的にスマートフォンの性能向上はハードウェア刷新が前提だが、Googleはソフトウェアだけでこれを達成しつつある。四半期ごとの「Feature Drop」によって定期的なドライバー最適化を進める手法は、競合他社にはあまり見られないアプローチといえる。
こうした更新によって、旧機種を使用し続けているユーザーにも恩恵がある点は大きな魅力である。スペックに頼らず体感性能を底上げできるという点で、アップデートを待つ価値のある機種に位置づけられるようになっている。
Adrenoとの差を縮める継続的進化とその限界
Snapdragonに搭載されるAdreno GPUは長年、Androidスマートフォンのグラフィック性能で優位を保ってきた。GoogleのPixelシリーズに採用されているMaliベースのGPUは、従来こうした競合に一歩及ばないとされてきたが、今回の大幅なドライバー最適化によって性能差は確実に縮まりつつある。特にVulkan APIに対応したアプリケーションではフレームレートや応答性の向上が顕著であり、実用面での満足度は高まりつつある。
ただし、今回の改善がAdrenoの全体的な優位性を完全に覆すものではない点には注意が必要である。ハードウェアアーキテクチャの違いからくる根本的な性能差は依然として存在しており、特定のゲームタイトルやエミュレーター、描画処理での安定性においてはAdrenoの方が優れているケースも少なくない。今回のアップデートはあくまで特定のAPIや処理に最適化されており、万能な解決策とは言い切れない。
それでも販売後の端末を対象にここまで性能を引き上げるGoogleの姿勢は、購入から時間が経過した機種を使い続けたい人にとって信頼できるサポート体制と映るはずだ。性能差は残るが、その差を技術力で埋める試みには十分な価値がある。
Source:ExtremeTech