Appleは2025年モデルとして、M3チップを搭載した新型iPad Airを発表した。デスクトップ級の処理能力を持つこのモデルは、ベンチマーク上で前モデルのM2チップを上回る性能を示しているが、デザインやディスプレイ仕様、カメラ機能などの構成に目立った変化はない。

新たに登場したMagic Keyboardにはファンクションキー列が加わったものの、その他の入力デバイスやインターフェースは従来通り。価格やストレージ構成も据え置かれたままで、進化の中心はプロセッサの刷新に留まる。これらの点から、既存のiPad Air M2ユーザーにとって買い替えの動機は乏しく、初めてiPad Airを選ぶ層にとってはM3モデルが有力な選択肢となる見通しである。

M3チップの採用による性能向上とベンチマーク結果の実態

iPad Air M3(2025)は、Appleの最新M3チップを搭載したことで、クロック数4.05GHzを実現しており、M2搭載モデルの3.49GHzに比べて明確なスペック上の差が見られる。高性能コアと高効率コアを4つずつ備える構成はM2と同様だが、処理速度の向上により、Logic ProやDaVinci Resolveといったデスクトップ級アプリがより快適に動作するとされる。

実際、ベンチマークテストにおいてもM3モデルが上位のスコアを記録しており、理論上の性能は確かに一歩進んでいる。一方で、ユーザーが日常的に行うタスク、たとえばブラウジング、動画再生、メモ作成などの軽作業においては、M2モデルとの差異は体感しづらいという指摘も多い。

性能差が可視化されるのは、マルチレイヤーの動画編集や高度な音声処理といった限られた用途においてであり、こうした作業を常用する層にとってこそM3の真価は発揮される。つまり、進化は確かに存在するが、その恩恵を享受できるかどうかは用途に大きく左右される構図である。

外観と周辺機器に見る刷新の少なさと市場戦略の狙い

新型iPad Air M3は、2024年モデルと同じアルミボディ、同サイズ・重量、同解像度のIPS LCDディスプレイを採用しており、外観上の違いは事実上皆無である。11インチと13インチの2サイズ展開も前モデルと同様で、アスペクト比や表示性能も変更がない。

画面リフレッシュレートは60Hzのままで、Proシリーズで採用されているProMotionやOLEDディスプレイの導入は見送られた。唯一の外部的な変化は、Magic Keyboardにファンクションキー列が新たに加わった点にとどまる。音量調整や集中モードといった操作が物理キーで直接行えるようになったことで操作性は向上したが、本体との接続方法や浮遊式のヒンジ構造など基本設計は従来のままである。

Appleがこのように限定的な変更にとどめた背景には、コストバランスの維持や上位機種であるiPad Proとの差別化戦略があると考えられる。過剰な進化を避けることで、製品ラインナップ間の価格帯やユーザー層の棲み分けを明確にする意図がうかがえる。

Source:PhoneArena