AMDの次世代Ryzen Threadripper Pro 9000シリーズが、世界貿易や税関データベースで確認され始めている。ブロガーのEverest氏によると、24コアと32コアのモデルが出荷記録に登場し、試験運用段階に入っている可能性が高いという。
出荷記録にはRyzen Threadripper Pro 9975WX(32コア)および9965WX(24コア)が含まれ、TDPはいずれも350W。これは現行7000シリーズと同一で、適切なファームウェアがあれば既存プラットフォームと互換性を持つ可能性がある。
96コアのフラッグシップモデル9995WXや、16コアの9955WXは未確認ながら、全5モデルの登場が見込まれている。ソケットはsTR5の継続使用が予想され、SP6記載は形式上のものとされている。
32コアと24コアの新型Threadripperが出荷記録に登場

Global Trade DataやCustoms Databaseで確認されたのは、Ryzen Threadripper Pro 9975WX(32コア)と9965WX(24コア)である。これらはTDPが350Wとされ、現行のThreadripper 7000シリーズと同等の消費電力設計を持つ点が注目される。今回の出荷は製品の市販直前を意味するものではないが、すでに正式名称を記載した状態での流通が始まっていることから、実機テストや初期評価が進行している段階にあると見られている。
名称に「Pro」が付されていることからも、対象はワークステーション向けのモデルである可能性が高い。CPU構成としては、Zen 5 CCDがそれぞれ8コア・32MBのL3キャッシュを搭載する点から、24コアモデルにはCCDが3基、32コアモデルには4基用いられる構成が想定される。これはパフォーマンスとメモリ階層のバランスを保つ構造であり、プロフェッショナル用途に最適化されていると解釈できる。
一方で、出荷記録における記載は非公式であるため、スペックの正確性や最終製品の仕様は変更される可能性がある。そのため、現段階では確定情報ではなく、あくまで開発フェーズの一端と捉える必要がある。とはいえ、すでに3モデルが記録上で確認されている点は、製品ラインアップの全体像が見え始めていることを示している。
最大96コアの9995WXは未出荷 ハイエンドモデルの動向に注目
現時点で出荷が確認されているのは中位レンジのThreadripper Pro 9000シリーズに限られ、最上位となるRyzen Threadripper 9995WX(96コア)や、エントリークラスの9955WX(16コア)は出荷記録に現れていない。このことは、上位・下位モデルの完成度がまだ一定に達していないか、もしくはテスト段階に至っていない可能性を示唆している。特に96コアモデルは、Zen 5 CCDを12基搭載し、384MBのL3キャッシュを内蔵する構成となる見込みで、実装や安定性確保に時間を要している可能性も考えられる。
また、96コアという極端な多コア構成は熱設計や電力供給の面でも高い要求が伴う。TDP自体は他モデルと同じく350Wとされているが、発熱分布やブースト制御などの観点で、慎重な設計が求められる段階にあると推測される。反対に、16コアの9955WXについては、構造的には比較的シンプルな構成であると考えられるものの、市場戦略や製品ポジションの調整に影響を受けている可能性も否定できない。
このように、現時点で見えているのは全体の一部にすぎず、今後の出荷記録やベンチマークデータの出現によって、各モデルの詳細が順次明らかになることが予想される。特に9995WXが登場すれば、HEDT領域におけるパフォーマンスの新たな基準が形成されることになりそうだ。
ソケット互換性に見る設計上の注意点と移行の可能性
今回のThreadripper Pro 9000シリーズは、出荷記録上では「SP6ソケット」と記載されているが、実際にはこれは正確な表現ではない。AMDのSP6ソケットとsTR5ソケットは、物理的には同一形状でありながら、電気的には互換性がない。つまり、SP6対応のCPUをsTR5ソケットに装着しても動作しないという点には注意が必要である。出荷記録におけるこの種の誤記は、データベース入力時の簡略化や混同に起因することが多いが、製品選定や購入時に混乱を招く可能性がある。
一方で、TDPが従来モデルと同じ350Wであることから、既存のsTR5プラットフォームに対しては、ファームウェアの更新によって新型CPUへの対応が可能になる可能性がある。つまり、既存環境を一新せずに最新アーキテクチャの恩恵を受けられる構成も一部では実現する可能性がある。ただし、これにはマザーボードメーカー側の対応やBIOSアップデートの提供が不可欠であり、すべての環境で保証されるわけではない。
結果として、物理互換性に惑わされず、正確な仕様を確認しながらシステム構成を検討することが求められる。高性能を追求する環境においては、細部の仕様差が安定性や性能に直結するため、この点は特に慎重に見極める必要がある。
Source:Tom’s Hardware