Ryzen 9000シリーズで注目を集めたZen 5アーキテクチャが、ついにThreadripperにも搭載される可能性が高まっている。出荷ログには24コアの9965WXと32コアの9975WXが記載され、名称として「Ryzen Threadripper 9000」が初めて登場した。

両モデルは350Wの電力目標とSP6ソケット対応が明らかになっており、EPYC「Siena」と同じ省スペース設計を共有する。クロックやキャッシュなどの詳細は未判明だが、既存のSP6プロセッサーを上回る仕様となる可能性がある。

デスクトップRyzenとEPYCの中間に位置づけられるThreadripperの特性を踏まえれば、今後さらに上位コア数のモデルが投入される見通しも否定できない。

SP6ソケット採用と350Wの電力仕様が示す新Threadripperの方向性

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今回確認されたRyzen Threadripper 9965WXと9975WXは、どちらもSP6ソケットに対応し、350Wという電力目標が記載されている。SP6は、これまでAMDのEPYC 8004「Siena」で採用されてきた省スペース・省電力設計のソケットであり、これまでのThreadripperが採用してきたsTRX4やSP3とは一線を画す構成である。これにより、新たなThreadripper世代は、フォームファクターの小型化やシステム全体の効率向上といった方向に舵を切る可能性がある。

とはいえ、今回の350Wという電力値はSP6プラットフォーム自体の制約を大きく超えており、単に省エネ指向に転じたわけではない。むしろこの仕様は、パフォーマンスの高さを維持しつつ、エンタープライズ向けと明確に差別化されたワークステーション分野での存在感を強める狙いが感じられる。SP6はEPYCにおいてはメモリチャネル数やPCIeレーン数が制限されているが、Threadripperにおいてはそれらの仕様が過剰となる場面も多く、選択として理にかなっている。

実際、ThreadripperシリーズはデスクトップRyzenでは処理が追いつかないような重量級タスクを想定している一方、EPYCほどのスケーラビリティまでは求められない中間領域を担う。そうした中でSP6を基盤にしつつ高出力な設計を組み合わせることで、冷却や電力供給に優れた環境を前提とした高性能構成を追求する姿勢が見える。

24コアと32コアのラインアップに見るZen 5 Threadripperの立ち位置

現時点で確認された新型Threadripperは、24コアの9965WXと32コアの9975WXの2モデルのみである。これは、現行のThreadripper Pro 7000シリーズの最上位が64コア構成であることを考えると、控えめなスタートに見えるが、Zen 5世代の特徴を反映した選択と見ることもできる。Zen 5はIPC(命令実行効率)の向上が図られており、コア単位での性能が従来より高くなるとされているため、単純なコア数の競争とは異なる軸での製品展開が想定される。

一方で、これら2モデルが製品全体の代表構成となるとは限らず、今後48コアや64コアといった上位構成が追って登場する余地も残されている。今回の出荷ログではまだクロック数やキャッシュ容量といった詳細スペックは明かされていないものの、Zen 5ベースの設計であることから、AI処理や高度な並列計算への対応力が一段と向上している可能性もある。

また、24コアと32コアというスペックは、ハイエンドPC用途だけでなく、映像編集や3Dレンダリングなど、実務的なクリエイティブ用途でも極めて扱いやすいバランス構成といえる。これにより、特定の業務用途に特化したハードウェア構成を好むユーザー層にとって、Ryzen Threadripper 9000シリーズは選択肢として現実味を帯びてくる。限られた情報から見えてくるのは、AMDが性能と使い勝手の両立を意識した新たなラインアップを準備しているということである。

Source:HotHardware