MSIは、AMDの新型Ryzen 9 9950X3Dに対応したSocket AM5マザーボード向けに独自の最適化機能を公開した。BIOSの更新や最新チップセットドライバの導入、「Memory Try It!」「高効率モード」など複数のチューニング機能を組み合わせることで、同社は最大14.5%の性能向上を実現できると主張する。
中でも、DDR5-8000へのメモリオーバークロックとレイテンシ調整がゲーム性能の向上に大きく寄与しており、『モンスターハンター ワイルズ』ではフレームレートが大幅に向上したという。なお、SMTや非X3D CCDを無効化する「X3D Gaming Mode」には注意が必要で、対象アプリに適した設定か慎重に判断すべきとされる。
これらの調整は高度ながら、PC環境を細かく仕上げたい者にとっては試す価値がある内容だ。
Ryzen 9 9950X3Dを活かすためのBIOS最適化とメモリチューニングの全貌

MSIは、Ryzen 9 9950X3Dの性能を引き出すために、AGESA 1.2.0.3以降のBIOSと最新のチップセットドライバ(v7.01.08.129以降)を推奨している。これにより、旧バージョンと比較して最大10%のパフォーマンス向上が見込まれるとされる。特に、Application Compatibility Databaseドライバの導入により、OSによるCCD(Core Complex Die)の割り当て精度が向上し、キャッシュ依存型のゲームやアプリが3D V-Cache搭載CCD上で動作するよう最適化される点が大きい。
加えて、MSI独自の「Memory Try It!」機能は、DDR5メモリを対象に豊富なオーバークロックプロファイルを提供し、ユーザーが複雑な調整を行わずとも安定した高クロック設定を試せる。「高効率モード」ではメモリ帯域の向上とレイテンシ削減を4段階で選択可能で、DDR5-8000 CL38設定と組み合わせた際、『モンスターハンター ワイルズ』で14.5%のフレームレート向上が確認された。
一連の最適化はRyzen 9 9950X3Dの持つポテンシャルを現実的に活用するための手段といえる。ただし、これらの調整はある程度の知識とリスクを伴うため、導入には注意と検証が必要となる。
X3D Gaming Modeの有効性と落とし穴を見極める
MSIが導入した「X3D Gaming Mode」は、Ryzen 9 9950X3Dの性能を一部制限することで特定のゲームに最適化するというアプローチを取っている。このモードでは非X3D CCDおよびSMT(同時マルチスレッディング)を無効化し、CPUを実質的に8コア/8スレッドの構成へと変化させる。これにより、一部のタイトルでは安定性やレイテンシ面での改善が見込まれるが、マルチスレッドに依存するゲームや作業用途では逆に性能低下を招く恐れがある。
そもそもRyzen 9 9950X3Dは16コア/32スレッドのハイエンドCPUであり、Windowsのスケジューラがタスク割り当てに十分対応できる点を考慮すると、OSによる自動最適化に任せた方が良い場合も多い。「X3D Gaming Mode」は極めて限定的な状況下でのみメリットを発揮するため、安易な常用は避け、実際のタイトルごとに効果を検証したうえで導入すべきだと考えられる。
一方で、このようなモードが提供されていること自体は、Ryzen X3Dシリーズの構造的特性に対する深い理解と、ゲームプレイに特化した柔軟な対応を目指す試みとして評価できる。すべてのユーザーに有効とは言えないが、目的が明確な場合に限り有用なツールとなる可能性はある。
Source:Club386