2024年末時点で3,340億ドルもの現金を保有するBerkshire Hathawayが、市場全体の下落にも関わらず年初来15%以上の株価上昇を記録している。AppleやBank of Americaなどの主要銘柄を売却しつつ、バフェットは昨年自社株買いも停止。現在のP/Bレシオは1.7倍超で、かつて割安と判断されていた水準を大きく上回っている。

巨額のキャッシュによる待機姿勢は強気にも見えるが、株価はすでに本質的価値を織り込みつつあり、今が買い時とまでは言い切れない。Motley Foolの推奨リストからも外れており、投資判断は慎重を要する局面といえる。

株価上昇の裏にある「乾いた火薬」とフロート戦略の独自性

Berkshire Hathawayが年初来で15%以上の株価上昇を記録している背景には、他に類を見ない資金戦略がある。とりわけ注目されるのが、2024年末時点で同社が保有していた3,340億ドルという巨額の現金だ。これは同社の保険事業を通じて得られるフロートと、株式の売却によって得られた現金が積み上がった結果である。バフェットは保険契約から得られるフロートを、一般的な債券投資ではなく、高品質な株式に振り向けてきた。この非典型的な手法が、Berkshireの投資運用における競争優位性を支えている。

一方で、過去数四半期においてはむしろ株式の売却が目立っている。AppleやBank of Americaのような大手銘柄の持ち株比率を引き下げたことで、保有キャッシュは加速度的に増加した。これは一見すると慎重な構えにも見えるが、逆に言えば今後の大型投資に向けた“火薬庫”が整っている状況と読み取れる。市場が大きく調整した際、バフェットがこの現金をどう動かすかが次の焦点となる。

現時点ではフロートの力と現金戦略が株価を支えているものの、あくまでそれは潜在力に過ぎない。実際にどこに資金を投じるかが見えない今、上昇の持続性には不透明さも残る。現金保有の安心感と、次の一手への期待感が複雑に交差する構図である。

自社株買いの停止が示す現在の株価評価とその意味

Berkshire Hathawayが6年間続けてきた自社株買いを、2023年第3四半期から突如として停止したことは注目に値する。2025年に入ってからも買い戻しの動きは一切確認されておらず、これは2018年以降で最も長く続く停止期間となっている。過去には株価純資産倍率(P/Bレシオ)を目安に自社株買いが実施されていたが、現在のP/Bは1.7倍超と、かつての割安基準である1.2倍を大きく上回る。これはバフェット自身が今の株価を割安とは見なしていない可能性を示唆している。

また、株価収益率(P/Eレシオ)も過去数年で最も高い水準に達しており、財務的な指標面からも株価が過熱気味である印象は否めない。これに加えて、自社株買いの停止は「株主還元」の意志が一時的に後退しているとも捉えられる。株式を買い戻す魅力が薄れているという判断は、他の投資家にとっても慎重な姿勢を促す要因となり得る。

現金を持ちつつ動かないという戦略は、極めて理性的だが、短期的な値上がりを狙う者にとっては退屈に映るかもしれない。割安感が見出しづらい水準で株を買い増すことのリスクが、ここでは暗に語られている。Berkshireの現在の価格には将来の期待値がすでに織り込まれており、今は「買い」よりも「静観」が求められる局面といえる。

Source:The Motley Fool