NvidiaがGTCカンファレンスで提示したのは、2028年までにデータセンター設備投資が1兆ドルに達するという大胆な予測だ。CEOジェンスン・フアンは、その中心にNvidiaのGPUがあるとし、AIインフラ市場での支配力をさらに強める構えを見せた。
同社は新たな「Blackwell Ultra GPU」や、次世代「Rubinアーキテクチャ」などを通じてハードウェア面での優位性を固めつつ、AIファクトリー向けOSと位置づける「Nvidia Dynamo」でソフトウェア領域でも存在感を拡大。加えて、自動運転やロボティクス分野への進出により成長の柱を複数に広げている。
株価は市場全体の調整を受けて下落傾向にあるが、PEG0.5未満という評価水準は、長期視点での投資妙味を示唆する。
1兆ドル市場を見据えたBlackwellとRubinの布陣

Nvidiaが2028年までに1兆ドルへと膨らむ可能性があるデータセンター設備投資をターゲットに据える中、同社は次世代GPU「Blackwell Ultra」の投入を発表した。従来のHopperアーキテクチャを凌駕する性能を持ち、処理速度とリアルタイム性が求められるサービスに特化している。また、2027年にはさらに強化された「Rubin Next」が登場予定で、GPUダイの数を2つから4つに倍増させる設計が明らかにされている。
こうした製品のロードマップは、AIインフラにおける演算性能への需要増加と歩調を合わせており、ハードウェア面での主導権を握り続ける狙いがうかがえる。とりわけ「Vera Rubin」はカスタム設計のArmベースCPUを統合し、既製品の2倍の処理速度を達成するとされる点が注目される。今後の供給面での課題や製造体制の変化によっては、投入時期や性能インパクトに影響が出る可能性も否定できない。
Nvidiaが描くのは、単なるGPU供給企業にとどまらず、AI社会の演算中枢そのものを構築するという広範なビジョンだと言えるだろう。
AIファクトリーの中枢となるDynamoの戦略的意義
Nvidiaが新たに発表した「Nvidia Dynamo」は、推論処理の効率化を図るソフトウェアプラットフォームである。ただのデータセンター向けOSではなく、数千ものGPU間で通信を最適化し、AI処理全体のスループットとコストを同時に改善する仕組みを備えている。Dynamoは、AIモデルの実用段階での演算効率を高める点で重要な役割を果たすと見られる。
この取り組みが象徴するのは、Nvidiaが単なるハードウェアベンダーから、AIの運用そのものを支える基盤の提供者へと進化を試みている点にある。Dynamoの導入が進めば、より小規模な事業者でもAIインフラを手軽に扱えるようになり、GPUの導入ハードルが下がる可能性がある。一方で、ソフトウェアの習熟や運用のノウハウが問われるため、導入先の教育体制や技術支援の整備も鍵となる。
Nvidiaはハードとソフトの垣根を取り払い、AIコンピューティングの「OS」としてのポジションを強化しようとしている。
ロボティクスと自動運転で拡張するAIの応用領域
GTCカンファレンスでは、Nvidiaがヒューマノイドロボットや自動運転分野への展開も明らかにした。「Isaac GROOT N1」は実世界と合成データの両方で学習可能なファウンデーションモデルであり、ロボットが多様なタスクをこなすための土台となる。労働力不足が叫ばれる中、世界で不足する5,000万の仕事を補う手段として期待されるが、その実用化には精度・安全性・コストなど多面的な課題が立ちはだかる。
また、自動運転領域ではGMとの提携が発表され、GPUの提供にとどまらず、AI製造モデルの訓練支援にも踏み込む構想が示された。GMは過去にロボタクシー事業から撤退しているが、今回は製造現場におけるAIの導入に焦点を移している点が異なる。Nvidiaはすでにトヨタとも提携済みであり、高度運転支援機能への対応に向けたソリューション展開を進めている。
AIを中核に据えたロボット・車両の領域拡張は、Nvidiaの演算技術が単なる計算資源から「行動のインフラ」へと進化する兆しとも受け取れる。
Source:The Motley Fool