エリック・トランプが「今は買い時」と発言してから約1カ月、イーサリアム(ETH)は33%もの下落を記録した。彼の発言は、仮想通貨に懐疑的だった従来の姿勢を覆すものであり、注目と物議を呼んだ。
この急落には、米SECによる規制の不透明感や、ネットワークの中央集権化に対する懸念など複数の要因が絡んでいる。タイミング的に彼の発言と価格下落が重なったことで、SNSでは風刺的な反応も広がっている。
エリック・トランプの発言が巻き起こした波紋とその市場影響

エリック・トランプは2025年2月、メディア出演の場で「イーサリアムは今が買い時だ」と語り、突如として仮想通貨市場の注目を集めた。ドナルド・トランプ元大統領の息子である彼は、これまで仮想通貨に懐疑的な姿勢を見せてきた人物であり、その突然の姿勢転換は投資家の間でも驚きをもって受け止められた。この発言があった直後、SNSや仮想通貨フォーラムには期待と困惑が入り混じった反応があふれ、一時的にイーサリアムの取引量も増加したと見られる。
しかしその後、ETHは急速に下落。3月22日時点で、発言時から約33%の価値を失った。この下落には、米証券取引委員会(SEC)による規制強化の兆候、PoS移行後のネットワーク運営に関する不安、マクロ経済要因など複数の要素が絡んでおり、エリックの発言が直接的な要因とは断定できない。それでも、著名人の意見が短期的な投資判断に影響を与え得ることが改めて明らかとなった。
この一件が示すのは、有名人の影響力が高まる一方で、投資判断においては情報の信頼性や背景を精査する冷静さが不可欠であるという点である。仮想通貨という不安定な資産クラスでは、感情や話題性だけで動くことが大きなリスクにつながる。
イーサリアムの下落要因とネットワークに向けられる懸念
イーサリアムが抱える下落の背景には、外部からの規制圧力と内部構造への不安が交錯している。米国をはじめとする各国で仮想通貨への監視が強まり、特に米SECがイーサリアムを証券として扱うか否かの議論を継続していることが、不透明感を高めている。こうした状況が投資家心理に冷や水を浴びせ、売りが加速する土壌を作ったとみられる。
加えて、2022年に実施された「The Merge」によるプルーフ・オブ・ステーク(PoS)への移行が、今になって新たな懸念材料となっている。PoSはエネルギー効率やスケーラビリティの向上という利点がある一方で、ステーキングによる資産集中の可能性や中央集権化に対する懸念がくすぶっている。これにより、開発者の一部や既存の支持層の中でも慎重な見方が出始めている。
価格の下落が進む中、仮想通貨市場全体にもネガティブなムードが広がっており、個別銘柄というより業界全体が調整局面に入った印象もある。ただし、イーサリアムの技術基盤やエコシステムの広がりは依然として堅調であり、分散型金融(DeFi)やNFTのプラットフォームとしての需要が直ちに失われる兆しはない。今回の下落は、そうした長期的価値とは別に、市場心理がどれほど価格に影響を及ぼすかを浮き彫りにした。
Source:TechStory