AIインフラ企業CoreWeaveが、約240億ドルの評価額でIPOを目前に控えている。Nvidiaによる支援や過去3年間で100倍以上の売上成長といった要素から、注目度は極めて高い。だが、その急成長の背後には顧客依存と財務悪化という懸念がつきまとう。
収益の大半をMicrosoftなどわずか2社に依存し、契約リスクが顕在化すれば成長鈍化は避けられない。さらに営業費用と利息負担の急増により、2024年の赤字は8億ドル超に達し、資金繰りの持続性も疑問視される状況である。
Nvidiaの名前とAIブームに乗ったCoreWeaveのIPOは一見魅力的に映るが、財務構造と事業基盤の不安定さを考慮すれば、冷静な判断が求められる局面である。
収益急拡大の裏に潜む依存構造と脆弱性

CoreWeaveは、AI分野におけるインフラ提供企業として急速な成長を遂げ、2022年の収益1,580万ドルから2024年には19億ドルに到達した。特に前年比で1,000%を超える成長率は注目に値するが、その原動力の多くが少数の顧客に集中していることは見逃せない。S-1の開示情報によれば、2023年時点で全売上の73%がわずか3社から、2024年には2社で77%を占めており、Microsoft単独で62%に達している。
このような顧客構成は、一見すると信頼される顧客基盤を意味するものの、特定企業との契約条件に著しく左右される経営構造を形成している。Microsoftとの関係が変化すれば、収益基盤の多くを一挙に失う可能性があり、成長の持続性に重大な影響を及ぼすことになる。AIインフラという新興市場においても、顧客分散と契約多様性は企業価値の安定に直結する指標である。
成長フェーズにおいて顧客依存が一時的に高まるのは自然な流れとも言えるが、上場企業としての透明性と持続性が求められる中、今後の経営方針におけるリスク分散の戦略が明確でない点は極めて大きな懸念材料である。IPOを通じて調達された資金をどのように再投資し、この偏重構造を是正するかが、企業の将来を左右する鍵となる。
財務の実態が映すコスト構造と資金調達リスク
CoreWeaveの営業費用は、2022年の3,870万ドルから2024年には15億9,000万ドルへと膨張しており、その増加率はわずか2年で約40倍に達している。株式報酬を除いた調整後営業費用においても同様に15億6,000万ドルを記録しており、成長を支えるコスト構造の重さが浮き彫りとなった。これにより、2024年の純損失は8億6,340万ドルと、過去最大規模に達している。
さらに注目すべきは、同社が抱える債務構造である。2023年末時点の15億ドルから、2024年末には79億ドルにまで膨れ上がり、今後5年間で約80億ドルの元本返済が必要とされている。そのうち56億ドルが2年以内に満期を迎える一方で、保有する現金および現金同等物はわずか14億ドルに過ぎない。この乖離は資金繰りの逼迫を示唆しており、資本市場の動向や金利環境に左右される調達リスクが極めて高い。
AI市場への期待が高まるなかで、CoreWeaveのような高成長企業に対する市場の評価は楽観的に傾きやすい。しかし、黒字化の目処が立たず、実体経済に基づくキャッシュフロー創出力が伴わなければ、バリュエーションの正当性は維持できない。現時点で同社は成長よりも財務の健全化と資金の持続性を優先すべき局面にある。
Source: The Motley Fool