Appleが音声アシスタント「Siri」の開発体制を大幅に見直した。Bloombergの報道によると、ティム・クックCEOはAI担当上級副社長ジョン・ジャンナンドレアへの信頼を失い、Siriの責任者を交代。新たにApple Vision Pro開発を率いたマイク・ロックウェル氏が就任した。

Siriの性能に対し厳しい見解を持ち、かつ開発において妥協を許さない姿勢で知られるロックウェル氏は、過去にも独自の音声操作アシスタントの構築を模索していたとされる。長年Siriの限界が指摘される中、この人事はAppleのAI戦略の分岐点となる可能性を秘めている。WWDC25に向けて、停滞を打破する新たなSiriの姿が披露されるかに注目が集まる。

Apple内部の権力構造に変化 ジャンナンドレア氏の退任とその背景

Bloombergの報道によれば、AppleのCEOティム・クックがAI部門の重鎮であるジョン・ジャンナンドレア氏への信頼を喪失したことが明らかとなった。これによりジャンナンドレア氏はSiri製品開発から退き、代わってVision Pro開発責任者のマイク・ロックウェル氏がSiriの新たなリーダーに指名された。

ジャンナンドレア氏は2018年にGoogleから移籍し、AppleにおけるAI領域の中核を担ってきたが、Siriの進化の遅れや新機能提供の停滞が続く中で評価を落としたものと見られる。Siriに対する内部の不満はこれまでも複数のメディアによって報じられており、The Informationによれば、ロックウェル率いるVision ProチームはSiriの音声アシスタント機能に失望し、独自の代替システムの開発を一時検討していた。

最終的にそれは実用化されなかったものの、Apple内でSiriに対する信頼が揺らいでいたことは事実である。今回の人事は単なる担当交代にとどまらず、AppleのAI戦略そのものの再構築を示唆する動きと捉えることができる。

ロックウェル氏が描くSiri再建のシナリオ 批判者から改革者へ

マイク・ロックウェル氏はAI分野における技術的な専門家ではないが、Apple Vision Proの開発を通じて優れた製品感覚と率直な意見で知られてきた。Bloombergによれば、ロックウェル氏は長年にわたりSiriに対して積極的な提案や厳しい評価を続けており、その姿勢は社内でも一目置かれる存在となっていた。

今回の抜擢は、従来のAI主導型の開発体制からプロダクト志向の視点を重視する構造への転換を意味するものと考えられる。音声操作を主軸に据えたVision Proの設計思想の中で、ロックウェル氏は既存のSiriに限界を感じていたことが報じられており、彼が描くSiriの将来像は既存機能の延長ではなく、より抜本的な再定義となる可能性がある。

Appleにとって音声アシスタントの精度と応答性は、今後の製品体験に直結する重要要素であるだけに、2025年のWWDCでどのような方向性が示されるかは今後の注目点となる。単なる機能改善にとどまらず、Siriが再びユーザーに信頼される存在へと進化できるかが問われている。

Source:9to5Mac