Appleが低価格帯市場と子供向け需要を見据えて開発を進めていたプラスチック製Apple Watch SEが、深刻な課題に直面していると報じられた。BloombergのMark Gurmanによれば、デザインチームは外観に難色を示し、オペレーション部門はアルミニウムモデルよりもコスト削減が難しいと判断しているという。
発表から2年以上が経過する中、現行モデルの刷新が期待されているが、コストとブランド価値の均衡が足かせとなり、廉価モデルの実現は不透明な状況である。
プラスチック筐体が直面する製造とデザインの壁

Appleが検討していたプラスチック製Apple Watch SEは、プロダクトの実現性という点で重大な障害に直面している。BloombergのMark Gurmanによれば、Apple内部のデザインチームはプラスチック筐体の仕上がりに満足しておらず、その外観がAppleの美学に見合わないとの判断が下されたという。
また、製造部門であるオペレーションチームは、現行のアルミニウムモデルと比較しても原材料費の大幅な削減が難しいと見ており、コスト面でも導入効果が薄いとの見解を示している。2022年に登場した第2世代Apple Watch SE以降、新モデルの発表は行われていない。
昨年9月のAppleイベントでも廉価モデルへの言及はなく、構想は開発の初期段階に留まっていることがうかがえる。そもそもAppleは一貫して自社製品に対して高いデザイン性と品質を要求しており、コスト削減のためにそれらを犠牲にする選択は難しい。今回の事例も、単なる価格帯戦略では製品化に至らないAppleの開発哲学が表出したものと捉えられる。
子供向け市場への参入がもたらすブランド戦略上の葛藤
Appleが検討していたプラスチック製Apple Watch SEは、単にコスト削減を目的とした製品ではない。背景には、子供向けウェアラブル市場という新たな領域への進出意図がある。保護者による位置情報管理やアクティビティ記録など、スマートウォッチは教育や安全管理の観点から家庭内需要が拡大している。
一方で、低価格モデルの投入はAppleのブランド価値との整合性を問われる判断でもある。Appleの製品は長年にわたり、高級感と革新性を両立する設計思想のもとに位置付けられてきた。仮にプラスチック筐体を導入した場合、その視覚的印象や耐久性への疑念がブランドへの信頼を損なう可能性がある。
製品開発においてコスト、ターゲット層、ブランドイメージの三者のバランスを取ることは容易ではない。今回の難航は、その調整の困難さが露呈した一例であり、Appleが廉価戦略に本格的に踏み切るには依然として時間が必要と見られる。
Source:Engadget