OpenAIとの連携強化や量子コンピューティング分野への新規展開にもかかわらず、Microsoft株(MSFT)は2025年3月時点で52週高値から17.9%、年初来でも9%の下落を記録している。背景には、クラウド事業の成長鈍化やAI投資の収益化に時間を要する構造的問題、さらに一部データセンター契約のキャンセルが投資方針の後退と受け取られたことがある。
2025年1月の決算では売上と1株利益が市場予想を上回ったが、クラウド売上は予想を下回り、市場の期待には届かなかった。PERは30倍と過去平均を下回る水準であるものの、企業としての成長スピードに鈍化の兆しが見える中、買い時と捉えるには慎重な判断が求められる。
アナリストの多くは強気姿勢を維持しつつも、短期的にはさらに下落の可能性があると指摘。過去の反発例に倣えば中長期的な投資機会と見ることもできるが、今はなおホールドが妥当とされている。
クラウド成長鈍化とAI投資の遅延が圧迫する株価水準

Microsoftは2025年度第2四半期決算において、売上と1株利益(EPS)で市場予想を上回る結果を示したが、クラウド部門の売上が市場予想を0.8%下回った点が市場に懸念を与えた。クラウド事業は同社成長戦略の中核であり、成長鈍化は将来の利益拡大余地への疑念を呼ぶ材料となる。また、AI分野への約800億ドルに上る投資も、依然として収益化の目処が立たず、10年以上かかるとの見通しが立っている。
一部では、データセンターのリース契約をキャンセルしたことが、AI関連投資方針の縮小と見なされ、強気だった投資家の心理を冷却させた。これらの要因が重なり、MSFT株は52週高値から17.9%下落し、年初来でも9%のマイナスに沈んでいる。過去のPER平均32.6倍に対し現在は30倍とやや割安ではあるが、成長鈍化の兆候がそのバリュエーションの持続性に影を落としている。
今後の動向は、クラウド部門の持ち直しとAI関連事業の実益化のスピードが大きな焦点となる。企業価値の本質は単なる技術的先進性ではなく、安定的なキャッシュフローの創出能力にあるという点を再確認すべき局面である。
短期的な調整局面か長期的な買い場かを分ける投資家心理の分岐
2022年にMSFT株が200日移動平均線を下回った際には大規模な売りが発生し、その後株価は大きく反発したという過去の経緯がある。今回も同様に200日線を大幅に下回る水準にあり、一部には再び反発の可能性を指摘する声がある。WindowsやMicrosoft Officeといった支配的製品群が依然として強力な収益基盤を形成しており、アナリスト平均目標株価は現在値から約31%上昇余地のある506.63ドルとされている。
カバーしているアナリスト44人のうち42人が「強気買い」または「やや強気」の評価を与えている点も、市場が長期的な回復を視野に入れている証左と言える。ただし、短期的にはテクニカル指標の悪化やセンチメントの冷え込みにより、さらなる調整局面が到来する可能性も否定できない。
このような局面においては、短期的な値動きに翻弄されるのではなく、ファンダメンタルズに立脚した分析が必要となる。高いPER水準が正当化されるには、持続可能な成長戦略と市場シェアの維持、ならびにAI事業の実益転換という三本柱が機能するかが鍵を握る。中長期視点であれば、現在の株価水準を戦略的な買い増しの契機とする見方も成り立ちうるが、慎重なタイミングの見極めが不可欠である。
Source: Barchart