米上院議員アシュリー・ムーディが開示した2024年の株式取引の中で、医薬品大手イーライリリー株の最大25万ドル購入が波紋を呼んでいる。購入日は3月6日で、ダイエット薬「マウンジャロ」のインド発売が発表される直前だった。

ムーディ議員は医療政策に強い影響力を持つ上院保健委員会に所属しており、業界への政策的関与と個別株取引の関係に懸念が広がっている。加えて、同氏は半導体関連株やオプション取引も含め、2025年にかけて44件・161万ドル相当の大規模取引を行っていた。

イーライリリーは新薬の成長と米国内投資、さらにFDAの動きも追い風に株式市場で存在感を高めているが、今回の取引は利益相反の可能性をめぐる議論を避けられない状況となっている。

上院保健委員が選んだ銘柄と市場動向が一致した異例の取引タイミング

アシュリー・ムーディ議員が3月6日に最大25万ドルを投じて購入したのは、ダイエット薬「マウンジャロ」などで注目されるイーライリリー株である。この取引は、同社がインド市場への参入を発表する直前のタイミングで行われた。発表は3月20日で、ムーディ氏の取引はその2週間前。加えて、ムーディ氏は医薬品政策の立案に関与する上院保健委員会の一員であり、政策情報へのアクセスが疑われる背景がある。

一方、イーライリリーは2023年第4四半期に124%という成長率を記録した「マウンジャロ」や「ゼップバウンド」などのダイエット薬により、業績を大きく伸ばしていた。加えて、同社はFDAの供給不足リストからチルゼパチドが除外されたことで、模倣薬の市場流通が制限され、競争優位性が高まっている。さらに、米国内での270億ドルに上る製造投資や新興国での事業展開も発表されており、投資家にとって魅力的な環境が整っていたのは事実である。

ただし、ムーディ議員の取引はこうした情報が市場で明確になる前に行われており、その先見性が純粋な投資判断によるものか、それとも政策関与と重なる領域での動きなのかが問われている。


政治家の株取引を巡る透明性と監視体制の課題

ムーディ議員はイーライリリー以外にも、半導体大手アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)株の購入や、スーパー・マイクロ・コンピューター(SMCI)の株式売却、さらには複数銘柄にわたるオプション取引も行っていた。これら一連の取引総額は2025年の報告ベースで161万ドルに達し、報告件数は44件に及ぶ。取引の規模、頻度、業界の幅広さから見ても、単なる長期保有目的の投資というよりも、情報の鮮度を重視した動きがうかがえる。

現在、米議会では政治家による株式取引の是非が議論されているが、報告制度や取引制限に関するルールは依然として曖昧な部分を残している。ムーディ議員のように、業界政策に直接関わる立場にありながら、その業界の個別株に大規模な投資を行うことが合法である現状は、利益相反の懸念を払拭しきれない。仮に規則を遵守していたとしても、市民の信頼を損なう可能性が高く、制度の限界が露呈している。

制度的な監視が緩い中で、こうした取引が「合法」であることと「適切」であることの間には明確な乖離が生じている。倫理的責任が問われるべき場面において、法律の網をかいくぐるような動きが常態化すれば、政策と市場の中立性が大きく損なわれかねない。

Source: Finbold