Appleは、空間写真や映像を活用した没入型コンテンツアプリ「Spatial Gallery」に関する図形商標を、米国および香港で出願した。米国ではクラス9とクラス41、香港では加えてクラス42も対象としており、視覚体験からコンテンツ制作まで多岐にわたる用途が示唆される。
本アプリはApple Vision Pro専用で、アーティストや映像作家による3Dコンテンツを通じ、ユーザーに空間コンピューティングの新次元を提示する。visionOS 2.4の一部として提供され、iPhone 15 Pro以降の空間キャプチャ機能と連携した立体的な表現も可能となる。
Appleが提唱する“空間の中で魅せるエンターテインメント”は、今後の映像・ソフトウェア体験に新たな基準をもたらす可能性がある。
「Spatial Gallery」図形商標の出願範囲と分類に見るAppleの戦略的意図

Appleは「Spatial Gallery」の図形商標を、米国では国際分類のクラス9および41、香港ではさらにクラス42も含めて出願している。クラス9はハードウェアおよびソフトウェア、クラス41はコンテンツ提供やエンターテインメント、そしてクラス42はソフトウェア開発やプログラミングサービスに該当する。
これにより、Appleは「見る・体験する」側面と「創る・提供する」側面の両軸での保護を図っている。特に注目すべきは、香港出願にクラス42が含まれている点である。これは単なるコンテンツ閲覧用アプリとしての位置づけにとどまらず、将来的な開発者支援機能や3D空間でのコンテンツ創出プラットフォーム化も視野に入れている可能性を示唆する。
Appleが提案する空間コンピューティングの世界観は、単なる映像技術の進化ではなく、体験と創造を統合する新たな情報環境の構築を志向していると考えられる。知的財産の観点からも、Appleは単一製品や単一用途に依存しない広域なブランド保護を進めており、その姿勢は過去のAirPodsやiPhoneの商標戦略と同様の系譜にある。
今回の出願は、Vision ProおよびvisionOS 2.4を中核とした次世代のエコシステム構築の一環であると見るべきだろう。
空間キャプチャとVision Proによる“体験の共有”が描く次世代メディアの姿
Apple Vision Proにおける「Spatial Gallery」は、iPhone 15 Proおよび16シリーズと連携し、ユーザー自身が撮影した空間ビデオや写真を3Dで再体験できる仕組みを提供している。空間キャプチャ機能によって記録された映像は、単なる記録映像にとどまらず、被写体との距離感や奥行き、空気感までも視覚的に再現し、極めて高い没入感を実現している。
この体験は従来の動画コンテンツの枠を超え、「記録」から「追体験」へと映像の価値を転換させる可能性を孕んでいる。加えて、芸術家や映画製作者による作品が同アプリに集約されることで、空間コンテンツは新たな創作領域として拡張される余地がある。
空間写真やパノラマ映像といった形式が、これまで静的とされてきた“ギャラリー”の概念を動的かつ参加型のプラットフォームへと変質させていく契機にもなり得る。Appleが提唱するこの空間的なメディア体験は、将来的にイベント記録、教育、リモート体験、医療、建築分野など多岐に渡って応用可能性が考えられる。
Vision ProとiPhoneの連携により、ユーザー自身が“空間メディアの創作者”となる時代の幕開けが、静かに始まっている。
Source:Patently Apple