Google PixelとNothing Phoneが搭載する独自UIは、かつて理想とされた「ストックAndroid」とはもはや異なるものとなっている。Pixel UIには特有のAI機能や撮影モードが組み込まれ、Nothing OSも独自デザインや機能で明確な個性を打ち出している。

一方、最も純粋に近いとされたAndroid Oneも失敗に終わり、真の意味での「ストックAndroid」を採用するスマートフォンは事実上市場から姿を消している状態だ。

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Pixel UIとNothing OSに見る“ストック風”の実態

Google Pixelに搭載されているPixel UIは、その外観や操作性において一見するとストックAndroidに近い印象を与える。しかし実際には、Pixel限定の独自機能が数多く追加されており、AOSPのシンプルな設計とは大きく異なる構造を持っている。たとえば「Hold For Me」や「Call Screen」、「天体写真モード」など、AIや専用ハードウェアを活かした高度な機能はストックAndroidには存在しないものである。

同様に、Nothing PhoneシリーズのNothing OSも「ストックに近い」と称されるが、実際にはGlyphインターフェースや独自のUI演出、カメラウィジェットなどを備えており、体験としては完全に別物である。特に35mm相当でカメラを立ち上げる機能や、ドットマトリクス風のアニメーションなどは明確な個性として設計されており、単なる軽量スキンとは言いがたい。

これらの事例が示すのは、「ストックに近い」という表現が必ずしも“純粋”であることを意味しないという現実である。むしろ、“素のまま”ではなく“あえて味付けされた”Android体験こそが、いまの主流と言える状況にある。

Android Oneの終焉が語るもの

かつて「ストックAndroid」に最も近い存在とされていたAndroid Oneは、現在その役目を終えている。最低限のアプリ構成とシンプルなUIによって低価格スマートフォン市場を整理しようとした試みだったが、プリインストールアプリの制限や自由度の低さにより、各メーカーが独自性を発揮できず、差別化の難しさに直面した。結果的に、Android Oneを採用した端末の多くは印象に残らず、市場から消えていった。

Googleのサポートに依存するアップデート体制は、メーカーにとっては魅力的である反面、柔軟なUI設計や機能追加を妨げる側面もあった。Nokia(HMD Global)など、しばらくはその姿勢を維持したブランドもあったが、販売面で大きな成果を残すことはできなかった。Pixel AシリーズですらAndroid Oneを採用しなかったという事実が、純粋なストック体験が市場に受け入れられにくい状況を端的に物語っている。

今、Android Oneの公式ページすら消えたことで、ストックAndroidの系譜は実質的に途絶えた。こうした経緯から、単に“軽い”とか“シンプル”といった価値よりも、明確な体験価値が求められていることが読み取れる。

今求められるのは“純粋さ”ではなく“個性”

「素のAndroid」というコンセプトは、かつては効率性やアップデートのしやすさの象徴だった。しかし、現在のスマートフォンにおいては、それだけでは十分な魅力とは言えなくなっている。PixelのようにAI機能を統合した体験や、Nothingのように独自インターフェースで視覚的に訴える設計が求められるようになっている。これは、スマートフォンが単なる“動くデバイス”ではなく、“自分に合った道具”としての役割を強く求められている証でもある。

ストックAndroidはあくまでベースコードであり、それ単体ではAPIやサービスが欠如しているため、現代の利用シーンには不十分である。AOSPをそのまま搭載しても、Googleサービスの統合やセキュリティ機能の欠如により、実用性に大きな課題が残る。結果として、GrapheneOSや/e/OSのようなプライバシー重視型であっても、独自の機能を追加しなければ実用的なOSにはなりえない。

こうした現実を踏まえると、「軽さ」や「純粋さ」だけではなく、体験としての深みや工夫があるかどうかが重要な評価軸となる。今や必要とされているのは、カスタマイズ性と“使っていて楽しい”という体験そのものである。

Source:Android Authority