AIエージェントのWebサイト操作を容易にするインフラとして注目される「Browser Use」が、Felicis主導のシードラウンドで1,700万ドルの資金を調達した。出資にはA CapitalやNexus Venture Partners、Paul Grahamも名を連ねる。

ETHチューリッヒ発のこのスタートアップは、Webのインターフェースをテキスト形式に変換することで、AIが選択肢を認識し自律的に判断できる環境を提供。中国のButterfly Effectが自社製品に採用したことで認知が一気に拡大した。

オープンソース戦略とY Combinator参加による開発者層の支持も背景に、動的なWebとの相互運用を可能にする「基盤的なレイヤー」として、急速に市場での存在感を高めている。

ETHチューリッヒ発のスタートアップが構築したAI時代のWeb基盤

Browser Useは、ETHチューリッヒのStudent Project Houseアクセラレーターから誕生したスタートアップであり、創業者のMagnus MüllerとGregor Zunicは、Webスクレイピングとデータサイエンスを融合させたアプローチにより新たな自動化基盤を創出した。

彼らは出会いからわずか5週間で初期デモを完成させ、その後オープンソースとして公開することで、開発者コミュニティの支持を急速に獲得している。

同社の技術は、WebサイトのUI構成要素をAIエージェントが理解可能なテキスト構造に変換する点に独自性がある。従来、AIによるブラウジングは視覚情報に依存していたが、動的なWeb構造には対応が難しく、高い障壁となっていた。Browser Useはこの課題に対し、選択肢の明示化と構造の安定化によって応答性を大幅に改善している。

また、Y Combinatorの2025年冬バッチへの参加により、北米市場での存在感も高まっており、現在は20社以上のスタートアップがこのソリューションを導入済みである。特に、中国のButterfly Effectが開発するManusがBrowser Useを採用した事例は、技術の信頼性を裏付ける要素と見られている。

AIエージェントが直面するWebの動的構造とBrowser Useの介在価値

従来のAIエージェントは、静的に訓練されたモデルに基づいて行動するため、リアルタイムで構造が変化するWebサイトの操作には脆弱であった。例えば、LinkedInのように頻繁にDOM構造が改変されるサイトでは、操作中の認識エラーや処理の中断が発生しやすく、実務における自動化の実現には限界があった。

Browser Useはこうした環境に対し、Webページをエージェントが「読む」ためのテキストベースのインターフェースへと再構築する役割を果たす。これにより、スクリーンショット解析のような不安定な手法から脱却し、エージェントがWeb上の意思決定やタスク実行を自律的に繰り返すことを可能とする。Müllerはこの仕組みを「低コストかつ高頻度な再現性の確保」と位置づけている。

FelicisのAstasia Myersが語るように、Browser Useは「動的なデジタル環境と静的な学習モデルとの架け橋」として機能する。この発言は、今後AIエージェントが単なる補助ツールから、Web上で完結するエンドツーエンドの業務自動化へと進化することを示唆していると考えられる。

Source:TechCrunch