米国における今週の資金調達は2週連続で減速傾向を示し、9桁台に達した案件はわずか数件にとどまった。中でもIT自動化企業NerdioがGeneral Atlantic主導で実施した5億ドルのエクイティラウンドが最大規模で、評価額は12億ドルに達した。

次点は非オピオイド系鎮痛薬を開発するLatigo Biotherapeuticsの1億5,000万ドル、商業設備管理SaaSのBuildOpsが1億2,700万ドルを調達。バイオテクノロジー分野の存在感が際立つが、資金の集中は依然として限定的である。

一方、ワクチン開発のCurevoや解析プラットフォームのDataminrも資金を確保したが、全体としては前年同期と比して調達ペースが鈍化。調査対象は3月15日から21日にかけて発表された米国企業の資金調達ラウンドである。

IT自動化のNerdioが主導 5億ドル調達の背景に業務効率化ニーズの高まり

Nerdioは、General Atlanticからの5億ドルの出資を受け、企業評価額は12億ドルに到達した。シカゴを拠点に、IT部門の仮想化や運用自動化を推進するソリューションを提供しており、すでに世界50か国以上で15,000以上の企業顧客を抱える。

1998年創業という老舗でありながら、黒字経営を継続し、年間経常収益も前年比85%以上と急成長を見せている。累計調達額は6億2,500万ドルにのぼり、事業モデルの堅牢さと市場拡大の余地を示している。

企業のIT運用が複雑化する中、担当者の負担軽減とセキュリティの高度化は共通課題であり、自動化技術の導入は避けて通れない流れとなっている。Nerdioの台頭は、単なるSaaSブームの延長ではなく、クラウドインフラの成熟と人手不足の加速によって支えられた構造的変化の象徴と捉えるべきである。

表舞台ではまだ知名度に課題があるものの、長期的にはMicrosoftパートナー企業としての立場も含め、B2B市場での影響力をさらに強める可能性がある。

バイオテクノロジー領域に続く資金集中と新薬開発の方向性

1億5,000万ドルを調達したLatigo Biotherapeuticsは、Nav1.8阻害剤という非オピオイド系の鎮痛薬を開発しており、Blue Owl傘下のファンドが主導する大型のシリーズBが実現した。オピオイド依存症リスクへの社会的警戒が高まる中で、既存治療法に代わる新たなアプローチへの期待は極めて高く、2018年創業にもかかわらず累計調達額は3億ドルに達する。

同様に、Curevoが進める帯状疱疹ワクチンの開発には、Medicxi主導の1億1,000万ドルが投じられ、感染症予防への関心も根強い。

これらの動きは、パンデミックを契機に拡大したバイオ投資が、引き続き確かな医療ニーズと結びつく分野へ向かっていることを示す。即時性の高い成果ではなく、治療体系の抜本的見直しに貢献するような技術が評価の対象となりつつある点は注目に値する。

また、Ampersand Biomedicinesのように疾患部位だけに選択的に作用する薬剤開発など、より精密で個別化された医療に向けた流れも進行している。資金規模としてはIT分野に劣るが、長期的な収益モデルを形成し得る構造が根底にある。

減速続く調達環境における特異点としての黒字・成長企業

今週の調達ランキングにおいては、5億ドルという巨額を調達したNerdio以外、1億ドル超の案件はLatigo、BuildOps、Curevoの3社に限られた。Dataminrが過去の高額調達以降でようやく動きを見せたものの、今回の8,500万ドルは転換社債と信用枠を組み合わせた構造であり、成長局面というよりも経営再構築の色合いが濃い。

BuildOpsは3,000億ドル市場を背景に業務プロセスの統合を進め、1億2,700万ドルを調達しているが、2018年創業という比較的若い企業である。

全体として、黒字経営または高成長率を誇る企業に限って調達が実現しており、投資家の選別姿勢は一層強まっている。スタートアップ市場に対する評価が調整局面に入って久しい中、資本効率の高さや市場浸透度が調達成功の鍵となっているのは明らかである。

資金調達の「量」よりも「質」が問われる状況において、収益モデルを確立し、すでにグローバル展開を進めるような企業の存在が際立っている。これらの企業が今後の成長の牽引役となるか否か、注視が必要である。

Source:Crunchbase News