仮想通貨批判で知られるピーター・シフ氏が、中国政府は2025年1月にビットコインを10万ドル超で売却済みである可能性が高いとSNS上で言及し、市場関係者に衝撃を与えている。

これに先立ち、同国が2019年の詐欺事件で押収した約19万4,000BTCが徐々に清算されていたとの分析が出ており、背景にはPlusToken事件があるとされる。米国の戦略的備蓄としてのビットコイン採用論も浮上するなか、両国間の資産保有競争が生む地政学的緊張が再び注目されている。

中国によるビットコイン資産の清算疑惑とその出所

中国政府が2025年1月に10万ドルを超える価格でビットコインを売却していた可能性が、ピーター・シフ氏の発言により注目を集めている。シフ氏は長年ビットコインに否定的な立場を取ってきたが、今回の発言は市場の関心を大きく揺さぶった。CryptoQuantのCEOであるキ・ヨンジュ氏は、中国が保有していた約19万4,000BTCは2019年の「PlusToken」詐欺事件によって押収されたものであり、それがHuobiなどの取引所を通じて段階的に売却された可能性を示唆している。

この詐欺事件では、数十億ドル規模の資産が投資家から不正に集められ、中国当局がその資産を押収したとされている。政府はこれらの暗号資産を一時的に国庫に移したと主張していたが、その後の保有状況や処分の有無については明確にされていない。今回の売却疑惑が事実であれば、国家が保有する仮想通貨の処理方針に透明性が欠けている点が浮き彫りになる。

また、このような大規模な売却が市場価格に与える影響も無視できない。公にされていない動きが流動性や価格形成に与える圧力は極めて大きく、特に短期保有者にとってはリスク要因となり得る。中国の姿勢が市場に不安定性をもたらしているとの見方も否定できない。

米国の戦略的備蓄論とビットコインを巡る地政学的構図

米国が国家戦略としてビットコインを準備資産に組み込む可能性をめぐり、議論が活発化している。2025年の米大統領選挙に関連して、トランプ前大統領の再登場が現実味を帯びる中、一部では政府によるビットコイン採用のシナリオが浮上した。しかし、ブルームバーグの予測によれば、その実現可能性は現時点で30%に過ぎず、具体的な政策転換には至っていない。

上院議員のシンシア・ルミス氏は、米国がビットコインを保有すれば、中国との間で資産保有競争、いわば仮想通貨版の軍拡競争が勃発する可能性があると警鐘を鳴らしている。これに対し、シフ氏は中国が既に売却済みであるとし、国家間の保有競争が現実的でないと否定的な見方を示した。各国の動きが見えにくい中、ビットコインが新たな地政学的リスクの火種となっている構図は無視できない。

日本や韓国がビットコインを準備資産として導入する動きを示していないことも、アジア諸国の慎重な姿勢を物語る。一方、価格は心理的節目である9万ドルに届かず、足元では84,333ドル台まで下落。短期保有者の含み損増加が示すように、現在は市場の転換点にあるとの見方もある。米中両国のビットコイン政策次第で、市場の方向性が大きく左右される可能性が高い。

Source:AMBCrypto