Linux 6.15で導入予定のx86/FPU関連アップデートにより、IntelおよびAMDプロセッサにおけるAES-XTS暗号方式で最大23%の処理性能向上が見込まれる。これはソフトIRQ内でもFPUが安定して使用可能になる仕組みによる成果である。
同時に、Intelが推進する次世代命令セット「Advanced Performance Extensions(APX)」への対応がLinuxカーネルにおいて初めて実装段階に入った。現時点では初期ステップにとどまるが、将来のプロセッサ対応を見据えた布石となる。
これらの変更はLinux 6.15のマージウィンドウに向けて提出済みであり、Linus Torvaldsが特に異を唱えなければ正式採用される見通しである。
AES-XTSで最大23%の性能向上 カーネルモードFPUの拡張が鍵

Linux 6.15に向けて提出されたx86/FPU関連の変更により、IntelおよびAMDプロセッサ上での暗号処理が大幅に効率化される。特に、カーネルモードでのFPU使用がソフトIRQ内でも安定して可能となったことで、AES-XTS暗号方式では最大23%の性能向上が報告されている。
この成果は、暗号処理におけるCPU資源の有効活用を可能にし、カーネル全体のスループット向上にもつながる。Phoronixによる先行記事でも、これらのパッチ群はx86/x86_64環境での暗号化・復号処理全体を加速させるものとして紹介されていた。
この改良は、クラウド環境や高速ストレージにおいて暗号化を前提としたワークロードに対し、低遅延かつ高効率なパフォーマンスをもたらす。データ保護が重視される場面では、性能低下が事業リスクとなることもあるため、Linuxカーネルレベルでの最適化は運用面でも大きな意味を持つ。
なお、この最適化は既存のハードウェアに対しても恩恵があり、新たな投資なしで処理性能を引き上げる点も評価されている。
Intel APXの初期対応が始動 将来のプロセッサ設計への備え
Linux 6.15では、Intelの新命令セット「Advanced Performance Extensions(APX)」への初対応が始まった。今回取り込まれたのは初期段階のパッチであり、APX命令を使用する将来のユーザースペースアプリケーションとの整合性を保つための準備的な位置づけとなっている。
現時点ではカーネル内部における扱いの整備が中心で、命令実行そのものを積極的に利用する段階には至っていない。しかし、Intelのエンジニアが積極的にパッチを投稿していることから、今後のリリースサイクルを通じてAPX対応は段階的に拡充されると見られる。
APXは汎用的なパフォーマンス向上を目的として設計された命令セットであり、特定分野に限定されない応用可能性を持つ。従来のx86命令セットとの互換性を保ちつつ、より効率的なレジスタ使用を可能にすることで、計算処理の並列化や低電力化の実現が期待されている。
こうしたハードウェア側の変化に対し、カーネルが段階的に適応することは、新世代CPUとの円滑な連携の土台となる。Intelの戦略を見据えた布石として、この初期対応は静かだが重要な一歩といえる。
Source:Phoronix