Appleが開発中の次世代ARデバイス「Vision Pro 2」は、Mark Gurman氏によると「流動的」な状況にあるという。だがこれは、初代Vision Proのハードウェアが高い完成度を保っていることの裏返しでもある。
今年中に予定されているvisionOS 3の登場は、Apple Intelligenceなどの新機能によって体験を一段と進化させる見込みで、ソフトウェア更新がハードウェアの刷新を急がせていない現状を裏付ける。単なる後継機の投入ではなく、真に次の時代を担う製品への足がかりとして、Appleは慎重かつ着実に道を切り拓いているようだ。
Vision Pro 2の開発は「全速前進」ではないが、AppleのAR戦略は停滞していない

BloombergのMark Gurman氏が報じたように、AppleはVision Pro 2に関連する新しいハードウェアの開発を進めてはいるものの、その進捗は「全速力」とは言えない段階にある。初代モデルの発売から時間が経過する中、一般的にはこのような進捗の遅れが製品寿命の終焉や市場撤退といった憶測を呼びがちだ。
しかし、Appleはこの分野に対し一貫して「ARグラスの本格投入」に取り組む姿勢を崩しておらず、短期的な成果に依存しない長期的視点をとっていることが読み取れる。実際、初代Vision ProにはM2チップが搭載されており、高度な処理能力と描画性能を持ち合わせていることが確認されている。
これにより、Apple Intelligenceなどの最新機能にも対応可能な基盤が整っている。こうした背景から、Appleは新型ハードウェアの投入を急ぐよりも、既存モデルのポテンシャルを最大限に引き出す戦略を選択しているとも解釈できる。
新製品の登場が緩やかであることは、初代Vision Proの完成度に対する自信の表れとも言えるだろう。AppleのAR領域における動きは、表面的な速度以上に、設計思想と製品哲学に裏打ちされた意図的な歩みによって形成されている。
ソフトウェア進化が示すAppleのVision Pro戦略の本質
AppleはvisionOSのアップデートを通じて、Vision Proの体験をハードウェア刷新なしに継続的に強化している。2.2や2.4といった更新を経て、2025年内にはvisionOS 3というメジャーアップデートが予告されており、Apple Intelligenceを含むAI機能の搭載が進む見通しである。これにより、既存のユーザーにも新しい没入型体験が提供され、初期投資の価値が継続的に引き上げられている。
特筆すべきは、これらのアップデートがハードウェアの限界に縛られていない点にある。一部ではM2チップによる処理能力が頭打ちと懸念されていたが、visionOSの進化によってその予測は覆された。むしろ、ハードウェアの土台が堅固だからこそ、Appleはソフトウェアの拡張性を武器にした戦略を進めているとも捉えられる。
短期的なリリース競争よりも、ユーザー体験の質に重きを置くこの姿勢は、Apple製品に共通する哲学の延長線上にある。Vision Proが「一過性のガジェット」にとどまらず、長期にわたるプラットフォームとなるための布石は、すでに打たれていると見るのが妥当だ。
Source:9to5Mac