アルファベットは、クラウドセキュリティ分野で急成長を遂げるWizを3,200億ドル(約3.2兆円)で買収した。Wizは2020年創業のスタートアップで、クラウドネイティブアプリケーション保護(CNAPP)を提供しており、企業のクラウド環境における脅威検知と対策を支援する技術が高く評価されている。
この買収により、Google CloudはAmazon Web ServicesやMicrosoft Azureと競り合う中で、セキュリティ性能の差別化が可能となる。さらに、Wizの顧客基盤と収益構造がGoogleの財務体質にも追い風となる見通しだ。
一方で、アルファベット株は年初来11.4%下落しており、買収効果が株価の反転材料となるか注視されている。ウォール街のアナリストはWizの戦略的価値を評価し、GOOGL株に対する強気の姿勢を維持している。
320億ドルの買収でGoogleが得る戦略的リターンとは

Googleの親会社アルファベットは、クラウドセキュリティスタートアップWizを全額現金で320億ドルにて買収した。Wizは2020年創業ながら、クラウドネイティブアプリケーション保護(CNAPP)を軸に企業のクラウド環境全体を可視化し、脅威を迅速に検出・対処できるソリューションを提供している。Google Cloudはクラウド市場でAWS(シェア30%)やMicrosoft Azure(同21%)に後れを取っているが、Wizの先進的技術を取り込むことでセキュリティ領域の差別化を進め、企業顧客に対する訴求力を高めることが可能となる。
また、Google Cloudは2024年の年間収益が433億ドルに達しており、前年同期比で30%の伸びを示すなど、堅調な拡大を見せている。さらに、Nvidiaとの連携によるBlackwellプラットフォームの導入や生成AIの展開も、同社クラウド基盤の優位性を高める要因となっている。今回のWiz買収がその流れを加速させる材料として、Google Cloudの競争力強化に寄与する可能性は十分にある。
一方で、Wizの評価額が高すぎるとの見方も根強い。設立からわずか数年で320億ドルという買収価格は破格とも言えるが、AIとクラウドの融合が進む中でセキュリティの重要性はかつてない水準に達しており、長期的には収益貢献が期待される。Googleにとっては、単なる機能強化にとどまらず、クラウド市場の構図に影響を及ぼす布石となるかどうかが問われる局面にある。
株価下落局面での買収決断と投資家の反応
2024年に入り、アルファベットの株価は年初来で11.4%下落している。これは景気後退への懸念やテックセクター全体への逆風を反映した動きとされるが、そうした環境下での320億ドル規模の買収は、投資家にとってリスクと映る可能性もある。特に、反トラスト法を巡る不透明感や、巨大買収が財務バランスに与える影響を危惧する声は少なくない。
しかし、BMOキャピタルのブライアン・ピッツ氏は、この買収をAI分野での革新を促す戦略的動きと評価し、GOOGL株に対して「アウトパフォーム」と230ドルの目標株価を再確認した。また、Canaccord Genuityのマリア・リップス氏も225ドルの目標株価を提示し、Wizの成長性と技術力がGoogleのクラウド戦略に長期的利益をもたらすと見ている。市場全体でも51人中39人のアナリストがGOOGLを「強い買い」としており、現在の株価水準から平均で30%、最高では44%の上昇余地があるとされている。
Wizの買収が短期的に株価を押し上げる決定打となるかは不透明だが、中長期の視点ではセキュリティ強化という文脈で企業顧客の信頼を高め、Google Cloudの選好度向上に貢献しうる。特に、AI活用が企業競争力の核となる今後の市場環境において、安全性への懸念を払拭できる体制構築は、クラウドシフトを後押しする要素となるだろう。アルファベットの財務基盤が依然として堅調であることも、今回の買収の実行力と持続性を支える裏付けとなっている。
Source:Barchart