ビットコインを約50万BTC保有するマイクロストラテジー(現Strategy)は、暗号資産市場の代表的存在として再評価の機運が高まっている。株価は過去5年で2,700%上昇したが、直近では40%下落し、押し目買いの好機との見方が浮上している。

第4四半期決算では売上が市場予想を下回り損失計上となったが、サブスクリプション事業の成長や過去最大のBTC買い増しが明るい材料とされた。加えて、戦略的な資金調達も行われており、長期的な株主価値創出への姿勢が鮮明になっている。

ウォール街では強気の評価が優勢で、12人中10人のアナリストが「強い買い」を推奨。目標株価平均は現在より55%高い512ドルとされ、将来的なオンチェーン利回りなどの収益源拡大も期待されている。

ビットコイン戦略に賭けた大胆な変革とその成果

かつてソフトウェア企業として認知されていたマイクロストラテジーは、2020年からビットコインへの集中的な投資を開始し、企業の存在意義そのものを塗り替えた。現在は「Strategy」と名を変え、49万9,226BTCを保有する世界最大級の企業ビットコイン保有者となり、流通する全BTCの2.3%以上を支配している。この戦略転換により、同社の株価は過去5年間で2,700%、直近1年でも117%という驚異的な上昇を記録した。

一方で、直近3ヶ月の株価は7.5%下落し、52週高値からは40%もの値下がりとなっている。これはビットコイン価格の急落に連動した結果であり、依然として暗号資産の高いボラティリティに強く影響されていることを示す。ヨーロッパでの規制強化や米国の政策不透明感、さらには地政学的リスクの高まりが不安定要因として浮上している。

しかしながら、こうした価格変動はStrategyの本質を否定するものではない。大胆なレバレッジ戦略と継続的なBTC買い増しの姿勢により、市場では同社の「ビットコイン財務会社」としての地位が揺るぎないものとなっている。急落を一時的な調整と捉えるか、構造的な弱点と見るかが、今後の評価を分けることになるだろう。


財務面に潜むリスクと成長領域の光と影

Strategyが2月5日に発表した2024年第4四半期決算は、事業構造の特異性を如実に表す結果となった。売上は前年同期比で3%減少し1億2,070万ドルとなり、市場予想を下回ったうえ、前年の黒字から一転して1株あたり3.03ドルの損失を計上した。デジタル資産の評価減による営業費用が約693%も増加したことが、この赤字転落の主因である。

一方で、サブスクリプションサービス部門は前年同期比で48.4%の増収となり、3,190万ドルに達した。これは、従来のソフトウェア事業の価値が依然として健在であることを示唆する材料である。また、BTC保有量を四半期で過去最大規模まで拡大させるなど、暗号資産戦略への揺るぎない姿勢を貫いている。財務強化の観点では、初のSTRK優先株を含む転換社債で5億8,400万ドルを調達し、資金基盤の整備にも取り組んでいる。

こうした二面性は、Strategyの本質的リスクと成長機会を浮き彫りにする。暗号資産の価格変動に強く依存する構造は短期的な収益不安を孕む一方、資本市場における先行者的立ち位置や機関投資家からの資金流入は、長期的な成長余地を支える要因となり得る。収益構造の多様化が今後の安定成長に向けた鍵となる。


ウォール街の評価と今後の価格見通しに対する慎重な視線

第4四半期の業績を受け、Keefe, Bruyette & Woodsは2月7日にMSTR株を新たにカバレッジ対象とし、「アウトパフォーム」と評価した。ビットコインに連動した投資先としての戦略性が高く、同社の積極的な買い増しと資本市場における機動力が評価されたかたちである。アナリストのビル・パパナスタシウ氏は、オンチェーン利回りという新たな収益源への布石にも言及している。

ウォール街では、12人中10人が「強い買い」、1人が「やや買い」、もう1人が「保有」を推奨するという強気の評価が支配的である。平均目標株価は512ドルに設定され、現在の水準から55%の上昇余地があるとされる。最も高い見積もりでは、650ドルまでの上昇を見込む向きも存在する。

ただし、評価の裏には潜在的リスクも内包される。暗号資産という極端な価格変動リスクを基盤とする企業である以上、短期的な株価の乱高下は避けられず、予測には慎重さが求められる。戦略的ビットコイン準備金の提案など政策環境の変化が後押しとなる可能性はあるが、それが実現するまでの不確実性は拭えない。過熱した期待と現実的なリスクの間で、評価のバランスを見極める必要がある。

Source:Barchart