ウォルト・ディズニーの株価が2025年3月、52週高値から20%下落し、年初来で11%のマイナスを記録した。DTCストリーミング部門の黒字転換や第1四半期決算の予想超えなど明るい材料がある一方、ケーブルTVの衰退や高額なスポーツ放映権など構造的課題がなお重くのしかかる。
それでも、Disney+やHuluの収益改善、テーマパークの成長見通し、映画部門の好調、さらにアナリスト29人中22人が「買い」以上の評価を示すなど、中長期では上昇余地を期待する声が優勢となっている。
現在の株価水準は過去の実績と将来の利益見通しを考慮すれば、短期的な懸念を超えた再評価の可能性を示唆している。
ストリーミング事業が黒字化 DTC部門の構造転換が進行中

ウォルト・ディズニーは2025年度第1四半期において、直接消費者向け(DTC)ストリーミング事業を黒字化させた。Disney+とHuluを含むこの部門は、前年の1億3,800万ドルの赤字から2億9,300万ドルの利益を計上するまでに改善。売上高も前年同期比9%増の61億ドルに達し、1ユーザーあたりの平均収益(ARPU)は5%上昇して7.55ドルとなった。
Disney+の加入者数は1%減の1億2,460万人と微減したが、収益性の向上が全体の営業利益拡大に寄与している。ストリーミング市場では競合との価格競争やコンテンツ投資の重荷が続いているが、ディズニーは値上げとコンテンツの選別により収益構造を見直しつつある。
DTCの収益力回復は、テレビ事業の低迷やケーブル契約者数の減少を補う新たな成長軸として機能し始めており、従来の「赤字部門」という評価を覆す局面に差し掛かっている。
株価は歴史的安値圏 評価と実力のギャップが示す再浮上の余地
2025年3月時点でディズニー株は52週高値から20%下落、年初来でも11%のマイナスを記録しており、時価総額1,790億ドルの巨大企業にとって異例の停滞局面を迎えている。フォワードPERは18倍、売上高倍率は1.96倍と、依然としてプレミアム水準にあるものの、業績とのギャップは拡大している。
実際、第1四半期決算では売上高が前年同期比4.8%増の247億ドル、調整後EPSは1.76ドルと44.3%増を記録し、ウォール街の予想を22.2%上回った。現金同等物は55億ドルに達し、財務体質も安定的である。アナリスト29人中22人が「買い」または「強い買い」を示し、平均目標株価は128.88ドルと、現在水準から28%の上昇余地を見込んでいる。
短期的な株価低迷は経営陣の混乱やストリーミング投資に対する懐疑の反映と考えられるが、メディア、テーマパーク、商品展開などの多様な収益源が堅調である限り、中長期的な再評価は十分に視野に入る。
Source:Barchart