Wells FargoのアナリストMike Mayo氏は、JPMorgan Chaseを「銀行界のNvidia」と表現し、AI技術を軸とした同社の成長戦略に高い期待を示している。年間180億ドルを投じるテクノロジー予算と、ChatGPT型モデルの導入、大規模データセンターへの共同出資など、金融業を再定義する先端技術への取り組みが加速している。

2024年第4四半期決算では収益とEPSが市場予想を上回り、資産運用残高も4兆ドルに到達。配当増と安定した収益基盤が評価され、株価は過去最高を記録した。Wells Fargoは21%以上の上昇余地を見込んでおり、JPMorgan株に対する投資妙味が改めて浮き彫りとなっている。

市場の関心がNvidiaに集中する中、AIを軸に急伸する異業種の存在が今後の投資戦略に新たな視点をもたらす可能性がある。

AIに年間180億ドルを投資 JPMorganの先進戦略がもたらす金融業の変革

JPMorgan Chaseは、年間180億ドルという巨額のテクノロジー予算を背景に、銀行業務のあらゆる領域でAI導入を加速させている。支店網の最適配置や不正検出、リスク評価に至るまで、業務プロセスの高度化が進んでおり、その影響は収益構造や人員配置にも及ぶ。実際、2024年第4四半期の決算では、投資銀行部門が前年同期比17.5%増という伸びを記録し、個人・地域銀行でも口座開設が急増。AI技術が効率化だけでなく、顧客接点の拡張にも寄与していることがうかがえる。

同社はまた、ChatGPTに類似した生成AIモデルを資産運用担当者向けに導入し、膨大な金融データの分析や顧客対応の質的向上に取り組んでいる。さらに、ユタ州に建設される100エーカー規模のデータセンターへ20億ドルの共同融資を実施し、インフラ面でもテクノロジー基盤の強化を進めている。これらの取り組みは、JPMorganが単なる伝統的銀行から、テクノロジー駆動型金融プラットフォームへと進化しつつあることを示唆している。

金融業界におけるAI活用の本質は、業務効率化にとどまらず、業界全体の構造を変える可能性にある。JPMorganの戦略が成功すれば、他の金融機関に対する圧力も高まり、業界全体の技術進化を促進する触媒となり得る。

株価は過去最高値を更新 配当と財務指標が示すJPMorganの安定性

2024年2月、JPMorganの株価は280.25ドルと過去最高値を更新し、過去52週間で25.3%の上昇を記録した。その背景には、堅調な決算実績と持続的な配当政策がある。第4四半期の収益は前年比10%増の437億ドル、EPSは58.2%増の4.81ドルに達し、市場予想を上回る結果となった。また、運用資産残高は4兆ドルを突破し、1株あたり簿価も11%増加している。

注目すべきは、28年連続の配当維持と14年連続の増配実績である。2025年4月30日には四半期配当を1.40ドルに引き上げ、年間配当は5.60ドルとなる見込み。配当性向も24.32%と控えめで、成長投資と株主還元のバランスが保たれている。こうした財務の健全性と安定収益構造が、投資家の信頼を裏打ちしている。

Wells FargoはJPMorgan株に対し、21%以上の上昇余地があると分析し、目標株価を300ドルに設定している。さらに強気な見通しでは330ドルへの到達も示唆されており、同銘柄が中長期のポートフォリオにおける中核銘柄と見なされる可能性がある。

JPMorganのような大型安定株が高評価を維持している背景には、金融市場の不確実性がある。変動相場のなかで安定した配当と業績が期待できる企業への関心は今後も継続するだろう。

Source:Barchart