ゴールドマン・サックスはAIサーバー企業Super Micro Computer(SMCI)の株式評価を「中立」から「売り」へと引き下げ、目標株価を現在値から約23%低い32ドルに設定した。格下げの背景には、競合のOEM・ODM企業による技術投資の加速や、製品差別化の困難さがあり、同社が掲げる2026年の売上目標達成に対する懐疑がある。さらに、粗利益率は2026年に11.7%まで低下すると予測され、評価益とリスクの不均衡も指摘された。一方で、他アナリストの見解は分かれており、株価上昇の余地を見込む声も依然として根強い。
ゴールドマン・サックスが指摘するバリュエーションの過熱と収益圧迫の構図

ゴールドマン・サックスのマイケル・ン氏は、Super Micro Computer(SMCI)の現在の株価が2025年の予想利益の約16倍で取引されている点を問題視し、過熱気味なバリュエーションと位置付けた。これは過去1か月で株価が18%超下落している状況に加え、さらに23%の下落を示唆する32ドルへの目標株価引き下げという、異例とも言える慎重姿勢である。
同社が先月に未提出だった財務報告書を提出し、ナスダックの上場基準を再び満たしたばかりであることを考慮すれば、同社に対する市場評価の変動は極めて大きい。
また、粗利益率の縮小が構造的な問題として浮上している。ゴールドマンは、2026年の粗利益率を11.7%と予測し、現行の12.2%からの下落を警戒材料としている。新機能開発に向けた継続的投資がその主因とされ、収益性の低下がEPS(1株当たり利益)予測にも悪影響を及ぼすとの見解である。財務上の不確実性に加え、強気相場での売却を助言する姿勢は、同社を取り巻く事業環境が決して楽観視できるものでないことを示している。
R&D主導の競争激化とSMCIの市場シェア懸念
SMCIを取り巻く競争環境は急速に変化している。とりわけOEM(相手先ブランド製造)およびODM(相手先設計製造)企業による研究開発投資が活発化し、AIサーバー市場における技術的差別化が困難になりつつある。ン氏は、これがSMCIの市場シェア維持にとって大きな障害となる可能性を指摘しており、同社が掲げる2026会計年度の売上目標400億ドルの達成にも暗雲が立ち込めている。
AIインフラ需要の拡大は確かに業界全体を押し上げる要因であるが、同時に競争の質も高度化し、価格競争力やサービスレベルの差異が企業の命運を左右する局面が増えている。SMCIが構造的優位性を保てなければ、既存顧客基盤の流出や新規案件の獲得困難に直面する可能性がある。こうした懸念は、一時的な業績悪化に留まらず、中長期的な成長戦略そのものの再構築を迫る要因ともなり得る。したがって、今後の設備投資や技術革新の方向性が、投資家の視線を集めることになる。
コンセンサス評価との差異が示す市場の分岐
ゴールドマン・サックスの格下げ判断が注目を集める一方で、他のアナリストの間ではSuper Micro Computerに対する評価は分かれている。市場コンセンサスは「中程度の買い」にとどまり、平均目標株価は58ドルと現在の水準から約40%の上昇余地を見込む。この乖離は、SMCI株に対する市場参加者の見解が二極化していることを端的に示している。
実際、先月の財務報告提出により規制面の懸念は後退し、足元の業績回復期待やAI関連需要の追い風を好感する声も根強い。SMCIの株価が年初来安値から50%以上上昇していること自体が、依然として成長期待を織り込んだものである。ただし、これが一時的な投機的上昇に過ぎないのか、あるいはファンダメンタルズに裏付けられた持続的成長の兆しなのかは、今後の業績開示や市場動向を見極める必要がある。アナリスト間の評価ギャップが広がる中、投資判断は一層慎重さが求められる局面に入っている。
Source:Barchart