Visaが暗号資産分野への本格参入を強化し、株価は前日比2%超の上昇を記録した。Coinbaseによると、Visaはサム・アルトマン率いるWorld Networkと提携交渉中で、ステーブルコイン決済機能のウォレット統合を目指している。
この動きは、Visaの広範な加盟店ネットワークを活かした国際的なステーブルコイン決済の実現を視野に入れたものであり、年初来9.1%の株価上昇はS&P500の下落と対照的である。さらにVisaは、Rainへの出資や欧米中南米でのカード発行体制の拡充など、デジタル決済インフラ整備を加速。
バフェット銘柄としての信頼と、アナリスト36人中全員が「強気買い」とする評価も後押しとなっている。
ステーブルコイン統合とグローバル決済網の再構築

Visaは、Coinbaseを通じてサム・アルトマンが率いるWorld Networkと連携し、ステーブルコインによる決済手段の実装を視野に入れた協議を進めている。具体的には、World Walletにステーブルコイン決済機能を組み込み、Visaの加盟店ネットワークでの利用を可能にする構想である。この動きは、既存の決済インフラに暗号資産の即時送金性とコスト効率を加味することで、グローバル市場での競争優位性を高めようとするものだ。
現在、ステーブルコインの送金額はVisaおよびMastercardの合計を上回る水準にあり、これはデジタル決済の中心が既に移りつつあることを示唆している。Visaはこうしたトレンドを見据え、単なる支払いプラットフォームにとどまらず、為替取引や仮想通貨の運用を含む包括的な金融ツールへと機能拡張を進めている。今後、規制対応やセキュリティ体制の整備が前提となるが、ステーブルコインが消費者決済の主軸の一つとなる環境をVisa自身が整えようとしている構図が見て取れる。
Rainへの出資とデジタルインフラ拡大の戦略的意義
Visaは、Norwest Venture Partnersが主導する資金調達ラウンドにおいて、カード発行プラットフォームRainへの支援を行った。Rainはすでにヨーロッパ、米国、ラテンアメリカでのカード発行においてVisaのPrincipal Memberの地位を獲得しており、これは地域横断的な即時発行サービス体制の構築が加速している証左である。Visaにとって、物理カードとデジタル決済を結びつける「最後の一手」として、Rainのテクノロジーと加盟店網が鍵となる。
一方で、単なる新興企業への投資というより、Visa自らが未来の金融エコシステムの核を押さえに動いている構図が浮かび上がる。こうした資本提携は、競争が激化するフィンテック領域において、自社のサービスの即応性と多様性を保つための戦略的布石と考えられる。カード決済のインフラを持つVisaが、より柔軟で統合的な金融環境の提供を目指す姿勢は、単なる決済会社から「次世代金融プラットフォーム」への進化の兆候と見える。
バフェット銘柄としての評価と市場の期待感
Visaは、バークシャー・ハサウェイのポートフォリオにおいて依然として1.0%の構成比を維持しており、ウォーレン・バフェットが株式を縮小し現金比率を高める中でも、その存在感は揺らいでいない。VisaおよびMastercardへの投資は、バークシャー内のポートフォリオマネージャーであるトッド・コームズおよびテッド・ウェシュラーによるものであるが、バフェット自身も「自分が購入していたとしてもおかしくなかった」との発言を残している。
このような信頼は、Visaが不況時にも一定の収益性を保ち、決済インフラとしての強固な基盤を有している点に起因する。さらに、アナリスト36名中全員が「Strong Buy」の評価を与えており、目標株価382.76ドルという水準は現在価格より11.3%の上昇余地を示す。ただし、暗号資産の不安定性や規制動向によるリスクも存在し、市場の楽観をそのまま反映するには慎重な姿勢も必要である。今後はテクノロジー革新と法制度のバランスを取った長期戦略が問われる局面に入る。
Source:barchart