バンク・オブ・アメリカが実施した最新の世界ファンドマネージャー調査によれば、2024年3月の米国株に対する投資家の成長期待が急落し、1994年の調査開始以来最大の米国株アロケーション減を記録した。回答者の平均キャッシュ保有比率は4.1%に上昇し、これはナスダックやS&P500の調整と一致する動きである。

背景にはトランプ前大統領による関税政策への懸念があり、調査では55%が貿易戦争を最大のテールリスクと回答。米国株の優位性はピークに達したとの見方も69%にのぼる。投資家はバフェットのように現金を厚く保有し、防御姿勢を強めている。

一方でBofAは、こうした急激な悲観の広がりこそが市場回復の契機となる可能性を示唆している。

米国株の過去最大級の資金流出と「現金シフト」の背景

バンク・オブ・アメリカが実施した3月のファンドマネージャー調査では、米国株へのアロケーションが純ベースで前月比40ポイント下落し、調査開始以来最大の変動幅となった。回答者のうち23%が米国株をアンダーウェイトとしており、これは前月の17%オーバーウェイトから一転した形である。現金保有比率は4.1%へと上昇し、BofAが定義する「売りシグナル」の閾値を上回った。これは市場に対する警戒感が現金志向を強めている証左といえる。

この動きは、ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイが保有する3340億ドルの現金ポジションとも呼応しており、多くの資産運用者が同様の防御的姿勢を強めていることが読み取れる。さらにS&P500およびナスダック指数が調整局面に入ったことも、こうした資金の移動を加速させる要因となったと考えられる。株式市場の急速な不安定化と、投資家の集団的なリスク回避行動が連動して起きていることは明白である。

米国株が長らく享受してきた「例外的優位性」が終焉を迎えたとの見方も、69%の投資家が同意している。かつてのような「米国一強」への信頼感は揺らぎつつあり、資金はより分散的な地域配分や安全資産へと移り始めている。

成長期待の急落とトランプ再登場が招く政策不透明感

3月の調査では、今後1年間の世界経済に対し「悪化する」と回答したファンドマネージャーが44%にのぼり、前月の2%から急上昇した。この成長期待の崩壊は、パンデミック初期の2020年3月以来の急落幅となる。背景には、トランプ前大統領による「関税戦略」への懸念がある。政権交代直後の減税や規制緩和への期待とは裏腹に、実際には貿易赤字是正のための関税強化に軸足を移したことで、投資家は不透明な政策運営を警戒している。

BofAの調査では、55%の投資家が「貿易戦争による景気後退」を市場にとって最大のテールリスクと認識しており、これは2020年4月の「コロナ再燃」以来最多の数値である。加えて、インフレに起因するFRBの利上げや、DOGE(政府効率省)設立による経済運営への不安なども重なり、複合的なリスクが市場心理を圧迫している状況だ。

一方で、70%以上の投資家は「スタグフレーション」の兆候を感じており、成長停滞と物価上昇の同時進行が警戒されている。もっとも、現時点で「景気後退」を予想する声は調査対象者の中には存在していない。過度な悲観は避けられているが、米国経済の先行きに対する信頼は確実に揺らぎつつある。

Source:msn