総資産1600億ドル超を誇るウォーレン・バフェット氏は、今なお2014年製キャデラックXTSを愛用している。この車も自身では選ばず、購入を任せたのは娘のスージー氏だった。「時間を浪費する買い替えには意味がない」と語るバフェット氏の価値観は、車選びに限らず日常の選択にも通底する。
実際、1958年に3万1500ドルで購入した自宅に今も住み、朝食は株価に応じたマクドナルドのセットだ。一方、2023年に他界した盟友チャーリー・ミンガー氏は「エアコン付きのバス」が贅沢だと語っていた人物。企業用ジェット機の導入時にも難色を示し、機体名には“擁護不能”との皮肉を込めた。
バフェットの「時間コスト」哲学と車選びの合理主義

ウォーレン・バフェット氏が2014年製キャデラックXTSに乗り続ける理由は、単なる物持ちの良さではない。車の購入は娘のスージー・バフェット氏に一任しており、その背景には「時間を浪費する余裕はない」という徹底した合理主義がある。2001年のバークシャー・ハサウェイ年次総会でも、数十秒で済む投資判断には価値があるが、新車選びのような生産性の低い行為には時間を割かないと明言していた。
その姿勢は車両の状態にも表れている。バフェット氏は過去に雹の被害を受けた車を割安で購入していたとされ、機能に支障がなければ見た目は重要視しない。このような消費行動は、単なる倹約ではなく「価値に見合った支出」に重きを置く投資家としての本質と通じる。
表面的な派手さより、資源を本当に意味あるものへ向ける。これこそが、彼の「時間」と「お金」の使い方に一貫する信条である。ブランド価値や社会的評価より、自身にとってのリターンを冷静に見極める思考は、あらゆる意思決定に通底しているように映る。
チャーリー・ミンガーの質素な美学と揺るがぬ支出哲学
2023年に他界したチャーリー・ミンガー氏は、生涯を通じて「華美な消費」に興味を示さなかった。バークシャー・ハサウェイの副会長として2.2億ドルの資産を築いたにもかかわらず、彼の移動手段に対する価値観は独特だった。1989年の株主向け書簡では、バフェット氏が「エアコン付きのバス」を“贅沢”と評したミンガー氏のスタイルを冗談交じりに紹介している。
企業のプライベートジェット導入時にもミンガー氏は懐疑的であり、機体の命名にあたっては「The Aberration(逸脱)」や「The Indefensible(擁護不能)」といった皮肉を込めた案が出された。ミンガー氏の姿勢は、無駄なコストを極力削るというだけでなく、企業文化としての緊張感の維持にもつながっていた。
もっとも、完全に飛行機を否定していたわけではない。バークシャーが保有していたプライベートジェット企業NetJetsには出資しており、移動手段の価値自体を否定する立場ではなかった。要は、「誰のための支出か」を明確にし、会社の資産を浪費と見なすか否かを常に問う姿勢を貫いていた点に、彼の一貫した思想が垣間見える。
Source:yahoo finance