イギリス発のNothingが投入した新モデル「Phone (3a)」と「Phone (3a) Pro」は、同一のプロセッサやディスプレイを備えながら、カメラ構成や背面デザインに差異がある兄弟機だ。どちらもSnapdragon 7s Gen 3や6.77インチOLEDディスプレイ、5,000mAhバッテリーを共有し、実使用感は近いとされる。

違いはProモデルの独特な円形カメラモジュールと3倍ズーム、さらに50MPのセルフィーカメラにある。価格差は80ドル。EssentialキーによるAI機能など共通の機能性も魅力的だが、Proの見た目とわずかな撮影性能の向上にその価値を見いだせるかどうかが選択の鍵となる。

外観とカメラに重きを置くならPro、コスパを優先するなら無印3aという選択肢が現実的といえる。

円形カメラとEssentialキーが象徴するProモデルの個性

Nothing Phone (3a) Proの背面は、従来の直線的なデザインを一新し、円形カメラモジュールによって視覚的なインパクトを強めている。これは単なる装飾ではなく、3倍ズームレンズを中心としたカメラ性能の向上を視覚的に訴える設計意図があると考えられる。一方、Phone (3a)は先代のPhone (2a)に近い外観で、親しみやすさと機能性のバランスを保っている。どちらのモデルもガラス製の透明な背面とプラスチックフレームを採用し、軽量さとデザイン性を両立している点は共通する。

Proモデルの差別化要素としてもう一つ注目したいのが「Essentialキー」の存在だ。物理ボタンの一つに割り当てられたこのキーは、AIによるスクリーンショット解析や音声メモの記録・文字起こしなどに活用される。Google Pixelの類似機能と比較すると、より操作の即時性に優れ、タスク整理や情報の記録を効率化する意図が見える。ただし、この機能が日常的に重宝されるかは利用スタイルに左右される。

外見上の個性とボタンによるAI体験の広がりは、Proが単なる上位互換ではなく、明確な使用感の違いを狙って設計されたことを示している。とはいえ、実用性を重視する場合、これらの差が必須とは言い切れない。

カメラ構成とズーム性能の差が実際に与える影響

Phone (3a)と3a Proは共にSamsung製の50MPメインカメラと8MP超広角レンズを搭載しているが、Proにはソニー製の3倍ズームレンズと50MPのセルフィーカメラが加えられており、カメラ性能において明確な差がある。最大ズーム倍率も30倍と60倍で異なり、遠景撮影時のディテール再現力に差が生じる設計だ。特に屋内環境や望遠撮影において、Proのほうが若干ながらノイズの少ないクリアな画像が得られるという。

ただし、実写サンプルに基づく限り、日常用途でこの差が顕著に現れる場面は限られており、暗所や極端なズームを多用しない限り、Phone (3a)でも十分に高品質な撮影が可能であるといえる。超広角カメラについてはどちらも4K動画に非対応で、ディテール表現には共通の課題を残している。セルフィーカメラに関しても、解像度の差はあるものの、明るい環境下での使用では両者とも満足度の高い結果を出している。

このように、Proのカメラ性能はスペック上では優位に見えるが、撮影スタイルが限られる中でその恩恵をどれだけ受けられるかは人による。価格差80ドルがこの性能差に対して十分な価値を持つかは、頻繁に望遠やインカメラを活用するかどうかにかかっている。

プロセッサとUI体験は共通 違いは期待感よりも実用性の優先度

Phone (3a)と3a ProはいずれもQualcomm Snapdragon 7s Gen 3を搭載しており、昨年のPhone (2a) Plusが採用していたDimensity 7350 Proと比較しても、飛躍的な性能向上は見られない。日常的な操作やアプリの切り替え、ブラウジングにおいては快適な応答性を示すが、ゲームや高負荷な編集用途では頭打ちになる可能性もある。とはいえ、ターゲット層が求めるのは安定性とバッテリー効率であり、このSoCの選択は妥当といえる。

両モデルに共通するNothing UIはモノクロ基調でミニマルなデザインが特徴で、視覚的ノイズを排除した操作感が魅力となっている。Essential Spaceと呼ばれる機能ではAIがスクリーンショットや音声メモを解析し、後から検索可能なデータとして活用できるため、スマホが単なる通知端末ではなく、思考や記録の補助ツールとして機能する。

性能面の差がほぼない以上、3aとProの間で選択の決め手となるのは、外見とカメラのわずかな違いのみである。処理能力や操作感に対して不満がないのであれば、より価格を抑えた3aを選んでも体験に大きな違いは生まれない。結果として、実際の選択においては「持つ楽しさ」か「価格重視」かの価値観が問われるモデル構成となっている。

Source:PhoneArena