米トランプ政権の国家安全保障チームが使用していた暗号化アプリ「Signal」でのグループチャットに、機密作戦情報を含む誤送信が発生し、ワシントン政界に激震が走っている。イエメンへの軍事攻撃に関する詳細が、アトランティック誌編集長ジェフリー・ゴールドバーグ氏に誤って共有されていた。

送信者は国家安全保障担当補佐官マイケル・ウォルツで、チャットには副大統領JDヴァンス、CIA長官ジョン・ラトクリフ、国防長官ピート・ヘグセスらが参加していた。これらのやり取りは安全保障会議の公式チャネル外で行われており、スパイ防止法違反の可能性が指摘されている。

政府高官が参加する非公式チャットに機密情報が流出 送信ミスの構図とその代償

今回明らかになったのは、国家安全保障に直結する米軍の軍事行動が、政府の認可を受けた安全な通信経路ではなく、暗号化アプリ「Signal」を通じて共有されていたという事実である。2025年3月15日に実施されたイエメンでのフーシ派への攻撃に関し、副大統領JDヴァンスやCIA長官ジョン・ラトクリフ、国防長官ピート・ヘグセスらが作戦前に具体的な議論を交わしていたことが判明した。

この機密会話には、アトランティック誌編集長のジェフリー・ゴールドバーグ氏が誤って追加されており、その原因は国家安全保障担当補佐官マイケル・ウォルツによる招待ミスとされる。米国家安全保障会議の報道官も、やり取りが本物である可能性を認めており、非公認の通信手段が選ばれた背景には、迅速な意思疎通を重視した内部文化の甘さがあるとみられる。

しかし、いかなる理由であれ、国家機密を扱う通信は厳格に管理されるべきであり、暗号化されているとはいえ民間アプリを用いること自体が構造的なリスクを孕む。これまでにもヒラリー・クリントンの私用メール問題や、トランプ・バイデン両大統領の退任後の機密情報所持など、政権中枢による情報管理の甘さは繰り返し問題となってきた。今回の事例もその延長線上にあり、制度的な見直しが急務である。

チャットで浮き彫りになった政権内の意見対立 ヴァンス副大統領の発言が映す外交の不一致

誤送信によって明らかになったのは、単なるセキュリティの緩さだけではない。Signal内での会話からは、トランプ政権内における外交政策の足並みの乱れが浮き彫りとなった。副大統領JDヴァンスは、イエメン攻撃に対して「欧州の輸送航路への影響はあるが、米国にとっての直接的脅威は小さい」と述べ、政権の方針に懐疑的な立場を取っていたことが分かる。

ヴァンスはさらに、「この行動が欧州に対する現在の大統領の姿勢と矛盾している」とし、攻撃時期の再検討を提案していた。ただし、最終的には政権の決定に従う姿勢を示し、「個人的な懸念は伏せておく」と結んでいる。これらの発言は、政権内部においてすら戦略の一貫性が保たれていない実態を物語っている。

外交や軍事行動は一枚岩であることが求められるが、今回のやり取りはその理想と現実との乖離を露呈した格好である。バイデン政権や過去のブッシュ政権においても、副大統領が大統領と異なる見解を持つ例は存在したが、こうした内輪の議論が外部に漏れることで、米国の外交的立場が揺らぐ可能性も否定できない。特に今後、同盟国や対立国に与える印象への影響は計り知れない。

Source:BBC