トランプ前大統領が率いるTrump Media & Technology Group(TMTG)は、暗号資産取引所Crypto.comと提携し、米国発の暗号資産ETFや関連金融商品を共同展開すると発表した。これを受けて、TMTG株は24日月曜の時間外取引で約9%上昇した。
同社はTruth Socialの運営企業として知られるが、2025年は38%下落と不調が続いていた。今回の提携は、トランプ氏がNFTやミームコイン、暗号銀行構想を進める中での新たな動きであり、政治とビジネスの境界を再び曖昧にする展開とも言える。
ETFは年内に規制当局の承認を得た上で、欧州やアジアを含む国際市場でも提供予定。運用はCrypto.comが担い、TMTGは新設のフィンテックブランド「Truth.Fi」を通じて商品展開を行うとしている。
Truth.Fi始動とETF構想の全貌

Trump Media & Technology Groupは、Crypto.comおよびその米国子会社であるForis Capitalと提携し、新たに立ち上げたフィンテックブランド「Truth.Fi」のもとで暗号資産ETFを展開すると発表した。商品群にはビットコインやCrypto.comの独自トークン「Cronos」などが組み込まれる見通しで、エネルギー分野をはじめとする伝統的証券と併せて構成される予定である。
これらのETFは年内に米国の規制当局の認可を受けたうえで、アジア・欧州の主要証券取引プラットフォームを通じて提供される計画だ。また、全世界で1億4000万人以上の利用者を抱えるCrypto.comアプリでも取り扱われる可能性が示唆されている。新ブランド立ち上げと国際市場展開という二重の戦略により、TMTGは赤字体質の脱却と成長軌道への転換を狙う構えとみられる。
一方で、TMTGの2024年通期決算では売上がわずか360万ドルに対し、損失は4億ドルに達した。今回のETF構想は規模拡大を目指す大胆な一手であるものの、その成否は暗号資産市場の動向と規制環境次第という極めて不透明な要素を孕んでいる。
ブランド依存と収益構造の課題
TMTGが今回のETF展開において果たす役割は、実質的にはブランドの貸与に近い。実際の運用・技術基盤はCrypto.comが担い、保管やカストディ業務も同社に一任されると明記されている。これは過去にトランプ氏が展開してきたNFTやミームコイン、さらには暗号銀行構想においても同様のモデルが採用されており、製品の本質的な価値ではなくブランド認知を主軸に収益を狙う手法といえる。
Crypto.comのCEOであるクリス・マルシャレクは「忠実な支持層を持つブランド」としてトランプブランドの影響力を評価しているが、その影響が持続的に投資商品としての信頼性につながるかは未知数である。現にTMTGの株価は2025年初から38%も下落しており、ブランド力だけでは市場の懐疑を払拭できない現実がある。
資本市場においては、ブランドではなく中身が試される。新たなフィンテック事業が単なるイメージ戦略にとどまらず、実質的なキャッシュフローを生み出す事業体に成長できるかが、TMTGにとって最大の課題となるだろう。
Source:CNBC