Appleが今秋発表予定の「Apple Watch Ultra 3」は、シリーズ初となる衛星接続および5G(Redcap)対応モデルとして登場する見通しである。これにより、セルラー圏外でも緊急時にメッセージ送信が可能となり、アウトドアや災害時の利用価値が飛躍的に向上する。
特に、iPhone 14以降に搭載された「Emergency SOS」機能を踏襲することで、Apple Watch単体での通信手段が大幅に強化される点が注目される。加えて、消費電力の少ない5G Redcapの採用により、バッテリー効率を保ちつつ次世代通信への対応が実現される可能性が高い。
また、Appleは今回、自社製チップ「C1」ではなく、MediaTek製モデムを選定すると報じられており、ハードウェア戦略の柔軟性にも変化が見られる。
Apple Watchシリーズ初の衛星通信と5G対応がもたらす機能的進化

Apple Watch Ultra 3に搭載される予定の衛星通信機能は、iPhone 14で導入された「Emergency SOS」と同様、セルラー圏外でも特定の方向にデバイスを向けることで衛星と接続し、緊急サービスと連絡を取ることを可能にする。この技術は登山やダイビングなど、インフラの届かない場所での事故対応手段として高い評価を受けてきた。
今回の対応によって、Apple Watchは単なる通知端末から、本格的なライフラインデバイスへと進化する。一方、5Gについては、Apple Watchとして初の搭載となり、従来のLTE接続に比べ、通信の高速化と遅延の低減が見込まれている。
ただし、今回採用される「5G Redcap」はIoT機器向けの仕様で、フルスペックの5Gに比べ通信速度は抑えられるが、電力消費を大幅に削減できる利点を持つ。Appleがこの仕様を選択した背景には、バッテリー性能と通信能力の両立という現実的な要請があると見られる。
これらの新技術は、過酷な環境で活動するユーザー層への訴求力を高めるとともに、スマートウォッチが担う役割の拡張を意味する。特に災害大国である日本においては、非常時の通信確保という観点からも大きな関心が寄せられるだろう。
自社製チップではなくMediaTek製モデムを採用する意義
Apple Watch Ultra 3では、昨年iPhone 16eで採用されたApple独自の「C1」チップではなく、MediaTek製モデムが採用されると報じられている。Appleが長年にわたり自社製シリコンへの依存を強めてきた流れの中で、サードパーティ製モデムを選択したことは注目に値する。この判断には、コスト、供給体制、技術的成熟度など、複合的な要素が影響した可能性がある。
MediaTekはIoT分野やミッドレンジスマートフォン向けの通信チップで高いシェアを持ち、特に5G Redcapのような省電力志向の仕様においては実績を持つ。Appleが今回、通信機能の安定性と効率性を重視し、あえて自社製チップを回避した判断は、短期的な製品最適化に重きを置いた結果と考えられる。
また、Appleは独自チップ開発を今後も進める構えを崩しておらず、今回は過渡的な措置と見る向きもある。今後の製品展開において、Appleが再び独自モデムに回帰するか、あるいはパートナーシップ戦略を強化するかは、業界全体のサプライチェーン動向に影響を与える可能性がある。今回の選択は、同社のハードウェア戦略の柔軟性を示す一例といえるだろう。
Source:9to5Mac