ドナルド・トランプ前大統領が再び「相互関税」を掲げた一方で、特定国の除外に言及するなど、関税方針に揺らぎを見せている。こうした通商政策の変動が、米国のPC大手HP(ティッカー:HPQ)に及ぼす影響が注目される。

HPは、配当利回り4%と割安なバリュエーションに加え、AI搭載PC市場の拡大やコスト削減策による利益率の改善が期待されており、強力なフリーキャッシュフローを背景に株主還元を継続する構えだ。一方で、景気減速やAI投資の収益性、トランプ関税の不確実性といったリスクも無視できない。

HPは北米販売向け製品の90%を中国以外で生産する計画を進めているが、グローバルサプライチェーンの構造上、通商政策の変化は依然として経営に影響を及ぼす可能性がある。


HPの株主還元方針とAI戦略が映す中期的成長への布石

HPはEBITDAに対する総負債倍率が2倍を下回る財務健全性を保ちつつ、フリーキャッシュフローを全額、配当と自社株買いに振り向けることを明言している。2024年度には34億ドルのフリーキャッシュフローを見込んでおり、この潤沢な資金を原資に高配当政策を継続する体制を構築している点が、インカム志向の投資家から評価を集めている。

一方、成長ドライバーとして注目されているのがAI搭載PC市場への参入である。HPは、従来型PCよりも5~10%高い平均販売価格が見込まれるAI搭載機の普及により、利益率の改善を期待している。また、Windows 11へのアップデートやPCの老朽化による買い替えサイクルも出荷数の増加を後押しするとされている。2025年までに業界全体で中程度の一桁成長が見込まれる中、HPはその中心的存在となることを目指す。

こうした高配当と成長の両立を狙う企業姿勢は、成熟企業の典型的なモデルとして捉えることができる。ただし、AI分野の競争激化や、先行投資の回収期間が不透明であることから、期待先行の側面には一定の注意が求められる。

関税政策の変動とサプライチェーン再編がもたらす地政学リスク

ドナルド・トランプ氏が再び打ち出した「相互関税」政策は、対象国を限定する可能性を含みながらも、貿易摩擦の再燃を予感させる内容である。HPは2025年度末までに北米販売製品の90%を中国以外で生産する計画を進めており、関税回避を念頭に置いたサプライチェーンの再編に取り組んでいる。しかし、依然として他地域からの輸入に依存する構造が残る以上、貿易政策の変更は製造コストや納期、価格戦略に大きな影響を及ぼす可能性がある。

また、地政学的な緊張の高まりは、単なる関税リスクにとどまらず、輸送コストの上昇や原材料価格の変動をも引き起こしかねない。HPのようにグローバルに事業展開する企業にとって、政治的決定が業績に直結する環境は今後も継続すると見られる。

関税政策の行方が不透明なままでは、HPのAI搭載PCやその他成長戦略の実行にも支障を来す可能性がある。製造拠点の多様化やリージョナル戦略の巧拙が、企業価値を大きく左右する局面に入っている。株価がストリート予想の最低目標を下回っている現状は、こうした不確実性を市場が織り込みつつある表れと見ることもできる。

Source:Barchart