最新のグラフィックカード市場は、正規価格の機能を果たさない異常な状況に直面している。NvidiaのRTX 5080や5070は、Newegg等で公式価格を50%以上上回る水準で販売され、MSRPが価格の指標とはなり得ない状況だ。eBayではRTX 4070 Tiが中古で平均777ドル、MSRPを下回るも供給量は減少傾向にある。
仮想通貨バブル時には月間1万枚超のGPUが流通したが、直近30日間では9000枚を下回る。供給は途絶え、価格は急変動を続ける。新製品購入希望者は、割高な現行価格と長期的な価格是正待ちの選択を迫られている。
Founders Editionの一部は、GTC会場限定での販売や高額参加費を要する入手困難な手段に限定されており、今後の価格正常化は依然として見通せない状況にある。
MSRPの崩壊とスキャルパー主導の価格形成

現在のグラフィックカード市場において、MSRP(メーカー希望小売価格)はもはや価格指標として機能していない。
NvidiaのRTX 5080や5070は、Neweggでの販売価格がそれぞれ公式価格を50%、27%も上回る異常な水準であり、RTX 5090や5080 Founders EditionはGTC限定でモバイル販売されるという特異な販路により、実質的な市場供給の枠外にある。購入者は正規価格での入手が極めて困難な状況に直面しており、限定的な入手手段が需給の偏りと価格の吊り上げを加速させている。
こうした状況を背景に、市場ではスキャルパーによる買い占めが蔓延している。MSRPで販売される製品は即座に自動化されたボットによって買い漁られ、流通の主導権は個人転売業者に移っている。
公式な小売チャネルを通じて製品を入手するルートが閉ざされ、AmazonやNeweggといった大手でも不透明な第三者出品者による高額販売が横行している。価格形成が市場原理よりも投機的な動きに左右されており、正常な競争が成立しにくい構造に陥っている。
eBay取引量の減少と流通の停滞
eBayにおけるGPU取引データは、現在の市場の縮小と供給難を如実に示している。2021年中頃には、仮想通貨マイニングの需要によって1ヶ月あたり1万枚以上のグラフィックカードが取引されていたが、直近30日間ではその数が9000枚未満にまで落ち込んでいる。特に最新世代のRTX 50シリーズの流通量が極端に少なく、限られた在庫が高価格帯で取引される傾向が強まっている。
この取引量の減少は、単なる需要の縮小ではなく、供給側の制限によってもたらされていると考えられる。中古市場で価格がMSRPより安価である製品が存在する一方で、供給自体が追いつかず、価格変動も激しく安定性を欠いている。
たとえば、RTX 4070 Tiは中古で平均777ドルと、MSRPの800ドルを下回っているものの、取引件数は伸びていない。このような状況は、消費者の買い控えと供給の逼迫が同時に進行していることを示唆しており、短期的な価格改善を見込みにくい状況といえる。
消費者の選択と旧世代GPUへの回帰
高騰する最新GPU価格に直面する中、現実的な選択肢として注目されているのが旧世代GPUの購入である。特にIntelのArc AシリーズやNvidiaの過去世代製品は、eBayなどの中古市場や一部オンライン小売でMSRPを下回る価格で提供されている。たとえば、Arc A750は200ドルで販売されているが、販売数は伸びておらず、市場の注目度は限定的である。
とはいえ、性能面で妥協を許容することにより、価格とのバランスをとる選択肢としては有効である。価格が安定するまでの一時的な措置として、古いGPUで凌ぐという戦略は、価格変動リスクを回避しつつ、必要な処理能力を確保する現実的な手段といえる。
GPUの不足が年末まで続く可能性を考慮すれば、短期的な性能よりも費用対効果を重視した選択が重要性を増す。新製品への期待が裏切られた中、最終的な判断は価格の回復時期とユーザーの使用目的に大きく依存することになる。
Source:Tom’s Hardware