AMDのリサ・スーCEOは、3月6日に発売されたRDNA 4アーキテクチャ採用の新型GPU「Radeon RX 9070 XT」が、過去世代比で初週売上が10倍に達したことを明らかにした。ASUS Chinaとのインタビューで語ったもので、日本を含む複数市場で販売チャートの首位に立つ圧倒的な好調ぶりが報告された。
価格性能比の高さを主因とし、同社史上最も成功したGPUとされる本製品は、日本市場においても50%近いシェアを獲得しており、供給体制の強化が急務となっている。スー氏はインタビュー内で、RX 9060を含む追加RDNA 4製品の投入にも言及しており、今後のラインアップ拡充に対する期待も高まる。
NotebookCheckによるレビューでも、競合のNvidia RTX 5000シリーズに対してコストパフォーマンス面で優位性を示したと評価されている。
RX 9070 XTが記録した初週売上10倍の背景と市場動向

Radeon RX 9070 XTは、2025年3月6日の発売直後から各国で販売チャートの首位を席巻し、初週売上は前世代製品の10倍に達した。AMDのリサ・スーCEOはこの成果を「同社史上最高のスタート」と位置づけ、グローバルでの急速な需要拡大に対応するため、生産体制の強化にも踏み切った。
とりわけ日本市場では、RX 9070シリーズが単体で約50%のシェアを獲得したとの報告があり、アジア圏での浸透度の高さが際立っている。
この成功の主因とされるのが、RDNA 4アーキテクチャの進化と、競合製品に対する価格競争力である。NotebookCheckのレビューでは、RX 9070 XTがNvidia RTX 5000シリーズと比較して手頃な価格帯にありながら、ゲーミング性能で同等以上の水準にあることが確認されている。
また、初週から16GBおよび8GB構成の下位モデルへの関心も高く、今後の製品展開に向けた期待感が市場を押し上げた側面もある。
急拡大する需要に追随できるかどうかは、今後の供給網と製造リソースに依存する。特に日本のような競争市場では、安定供給がブランドの信頼性に直結するため、AMDにとって生産戦略の緻密な設計が問われる局面に差し掛かっている。
ハイエンドGPU市場における価格戦略の転換とAMDの位置づけ
AMDがRX 9070 XTで採用した価格戦略は、これまでのハイエンドGPU市場における常識に一石を投じたものである。
従来、最上位クラスの性能を求める場合には、数万円単位で価格が跳ね上がるのが一般的であったが、今回の製品は性能とコストのバランスを重視し、多くのゲーマーにとって「手の届く選択肢」となった。これはAMDが長年掲げてきた「アクセス可能なハイパフォーマンス」という理念の具体的な成果といえる。
特筆すべきは、リサ・スーCEOの発言に見られる中長期的な製品設計思想である。彼女は「アーキテクチャの設計は数年前から始まる」とし、RDNA 4における価格対性能の最適化が計画的なビジョンに基づくものであることを示唆した。
性能競争が激化する中、価格戦略を武器とする手法は、企業の資源配分や製造コスト管理の巧拙を問うものであり、AMDの戦略的転換が際立つ。
今後の鍵となるのは、価格破壊に伴う収益モデルの再構築と、ブランド価値の持続的強化である。短期的には売上の伸長が期待できるが、中長期的にはこの戦略が市場全体の価格感を引き下げるリスクも孕む。AMDはそれを見越したうえで、次なるRDNA 4製品群の準備を進めている可能性が高い。
Source:NotebookCheck