中国の電気自動車大手BYDが2024年に記録した売上高は7771億元(約1070億ドル)に達し、テスラの約977億ドルを上回った。EVおよびハイブリッド車の販売が前年比で40%増加し、年間約430万台を出荷。純利益も前年比34%増の400億元に達している。

BYDは中型セダン「秦 L EV」を発表し、テスラ「モデル3」と類似のデザインながら価格は約半分に抑えられ、コスト競争力を示した。さらに給油並みのスピードを誇る超高速充電システムを発表するなど、技術面でも攻勢を強めている。

一方で、香港市場では業績発表直後に株価が3.2%下落するなど、市場の反応は冷静。輸出比率は前年比でわずかに上昇し29%となったが、米国市場への未参入やEUでの関税17%の影響が成長の壁となる可能性がある。

自動車販売430万台でEV市場を席巻 BYDの急成長の要因

2024年におけるBYDの車両販売台数は約430万台に達し、そのうちの多くをバッテリー式電気自動車(BEV)およびプラグインハイブリッド車(PHEV)が占めた。前年比40%という著しい成長率は、同社の価格戦略と製品の幅広さに裏付けられている。中でも新型「秦 L EV」は、テスラ「モデル3」に類似した設計を持ちながら、価格を約半分強に抑えた点が市場から注目された。

BYDの収益は7771億元(約1070億ドル)と過去最高を記録し、純利益も前年比34%増の400億元(約56億ドル)に達している。自動車関連事業は売上の約80%を占めており、同社の成長エンジンとしての地位を確固たるものにしている。販売の約29%は中国本土以外の市場によるもので、前年比で2ポイント上昇した。

製品開発の迅速さとコスト管理能力に加え、独自のバッテリー技術や垂直統合型のサプライチェーンが、世界的なEV競争での優位性を支えている。米国未参入という制約がある一方で、東南アジアや欧州を中心に海外展開を加速しており、BYDは“量産による支配”という中国流の成長戦略を象徴する存在となっている。

 

テスラを凌駕した売上と株価の乖離 市場の冷静な評価の背景

BYDは売上高でテスラを上回ったにもかかわらず、2024年3月の香港市場において株価は3.2%下落した。これは、好決算と市場評価が必ずしも一致しない典型的なケースであり、投資家心理における将来不確実性が影響したと考えられる。とりわけ、米国市場未参入と欧州での17%の関税負担は、グローバル展開におけるリスクとして意識されている。

さらに、世界的なEV市場における需要の先行きや、地政学的リスク、各国の規制動向も投資判断に影を落としている。BYDが発表した超高速充電システムは技術革新として注目されているが、その普及にはインフラ面の課題も存在するため、短期的な業績への寄与は限定的との見方も出ている。

市場が注目しているのは、単なる販売台数の増加や売上高ではなく、それが持続可能な利益成長につながるかどうかである。BYDの収益性は向上しているが、過度な価格競争が利益率を圧迫するリスクは依然として残る。株価の動きは、これらの複合的な要因を織り込んだ結果といえる。

Source: Barchart.com