Snapdragon 8 Eliteに次ぐ新型4nmチップセット「Snapdragon 8s Gen 4」が、TSMCの製造ラインを採用すると報じられている。サムスンの4nmプロセスも実績があり有力視されていたが、最終的にクアルコムはTSMCを選んだ可能性が高い。

注目すべきは、サムスンの3nmプロセスに対する業界の不信感が、成熟した4nmプロセスにも影響を与えた可能性がある点である。歩留まりの改善や次世代技術への対応を進めるサムスンにとっては痛手となりうる判断であり、主要顧客の信頼回復には依然として課題が残る。

Snapdragon 8s Gen 4には、Cortex-X4やCortex-A720などの市販CPUコアが採用され、クアルコム独自のOryonコアは搭載されないとされている。

Snapdragon 8s Gen 4に搭載されるCPU構成とその特徴

Snapdragon 8s Gen 4には、Cortex-X4プライムコア(3.21GHz)を筆頭に、3つのCortex-A720(3.01GHz)、2つのCortex-A720(2.8GHz)、さらに2つのCortex-A720(2.02GHz)という構成が採用されると噂されている。この構成は、パフォーマンスと電力効率のバランスを意識した設計であり、ハイエンド機に求められる応答性やマルチタスク処理を重視した内容といえる。

Oryonコアではなく市販コアを用いている点も見逃せない。Oryonはカスタム設計の高性能コアとして注目されてきたが、今回の8s Gen 4では搭載を見送っている。これにより、チップの熱設計やコスト面でのバランスが重視された可能性がある。チップのグレード名に「Elite」ではなく「Gen 4」を用いるとの噂も、ターゲット層をやや下に設定している証左とも考えられる。

このスペックを見る限り、Snapdragon 8s Gen 4は完全なフラッグシップではないものの、上位モデルに匹敵する高性能を維持しつつ、コスト最適化を狙ったチップとして多くの端末に採用される余地があるといえる。

TSMC選定の背景とサムスンへの信頼回復の壁

Snapdragon 8s Gen 4の製造には、TSMCの4nmプロセスが採用されたとされる。これまでにもSnapdragon 8 Gen 1や5Gモデムではサムスンの4nm(SF4E)プロセスが使われてきたが、今回は見送られた。この判断の裏には、サムスンの3nmプロセスに関するトラブルの影響が、4nmにも波及した可能性がある。サムスンは2023年に4nmの歩留まり向上を達成したと報じられているが、それでも主要顧客の不安は払拭しきれていない。

技術的には、サムスンは2.5Dや3Dパッケージングなど次世代技術に対応した量産体制を整えている。それでもクアルコムがTSMCを選んだ背景には、安定した供給体制と実績、そして製造信頼性の差が影響しているとみられる。TSMCは長年にわたって高性能SoCの製造を担い、業界での信頼を築いてきた経緯がある。

サムスンが次に打つべき手は、技術向上だけでなく、顧客との関係強化による信頼の再構築にある。TSMCとの競争において、プロセス世代の進化だけでは顧客の選定に結びつかないという現実が今回のケースから見て取れる。

Source:SamMobile