Googleは今月、Tensor Gチップを搭載したPixelスマートフォン向けに、新たなGPUドライバを含むAndroid 15 QPR2アップデートを配信した。これにより、Pixel 6aや7aといった旧モデルでも、Vulkan対応アプリで明確なパフォーマンス向上が確認されている。
当初はAndroid 16のベータ機能による改善と考えられていたが、実際には現行のAndroid 15内の変更が要因であることが判明した。特にGeekbench 6のGPUスコアにおいては、Pixel 7aが最新のPixel 9 Proと並ぶ結果を出す場面もあり、過去モデルの見直しを促す可能性がある。
この向上はすべてのTensor搭載Pixelが対象となっており、条件を満たす環境下では“無料の性能ブースト”と言える恩恵が得られる点が注目されている。
Pixel 6aや7aがPixel 9 Proに肉薄したベンチマークの実態

今回のアップデートによって、Pixel 6aやPixel 7aといった過去のモデルが、最新のPixel 9 Proとほぼ同等のGPU性能を一部ベンチマークで示した事実は注目に値する。特にGeekbench 6のGPUテストにおいて、Redditユーザーが投稿したスコアでは、エントリーモデルの7aですら現行フラッグシップと張り合える数値が記録された。これらの性能差の縮小は、単にハードウェアの力に依存しない最適化の有効性を裏付けるものといえる。
その鍵となっているのが、Android 15 QPR2に含まれる新たなGPUドライバである。このドライバは、Vulkan APIに最適化されており、特定のアプリケーションにおいて描画処理の効率を飛躍的に高める。その結果、ハードウェアの世代差をソフトウェア側である程度埋めることに成功している。ただしこの性能向上は、すべてのアプリやゲームで体感できるわけではないため、過度な期待は禁物である。
旧機種に思わぬ“第二の息吹”を与えた今回の改善だが、これは長期的なソフトウェアサポートの意義を示す好例といえる。性能が頭打ちだと感じていたユーザーにとっては、再評価のきっかけにもなり得る。
新機能ではなくドライバ更新が真の要因と判明
Pixelシリーズの性能向上に関して、当初はAndroid 16の新機能による恩恵と見なされていたが、実際にはそうではなかった。Android Authorityの調査により、GPUパフォーマンスの向上はAndroid 16由来ではなく、今月初旬にリリースされたAndroid 15 QPR2に含まれるGPUドライバ更新によるものであることが明確になった。これにより、パブリックベータに対する先入観を持っていた一部ユーザーに混乱が生じたことも否定できない。
この事実は、システムアップデートの細部、特にドライバレベルでの改良が持つ影響力を示している。大規模なバージョン変更に注目が集まりがちだが、目立たないマイナーアップデートの中にも、体感に直結する革新が潜んでいることは見落とせないポイントである。今回の事例では、目に見える機能追加ではなく、裏側の処理改善が主役だった。
新しいUIや派手な新機能に目を奪われがちな流れの中で、このような“静かな進化”が実現されていたことは、ソフトウェア設計の奥深さを感じさせる。定期的なシステム更新を軽視せず、内容を確認する価値が改めて浮き彫りになった。
Vulkan最適化による限定的な恩恵と今後への期待
今回のGPU性能向上はすべてのアプリで一様に発揮されるものではなく、Vulkan APIに対応したアプリケーションに限定される。実際に恩恵が確認されているのは、Geekbench 6などの特定のベンチマークや描画系アプリであり、日常使用のすべてに直結する改善とは言い切れない。とはいえ、今後Vulkanへの対応が広がれば、今回のアップデートがもたらす影響はより広範に及ぶ可能性もある。
また、PixelデバイスではAndroid 16のベータ版にてデスクトップモードの実装や、画面消灯時の指紋認証機能の追加なども確認されており、将来的な機能強化と性能改善の両輪で使い勝手が向上していく流れが期待されている。ただし、これらはあくまで未確定の段階であり、正式リリースまでに変更や削除されるリスクもある点には注意が必要である。
性能向上と機能拡張が同時に進行する現在のPixelシリーズは、古い機種であっても無視できない魅力を持ち始めている。今後も“ハードを買い替えなくても進化できる”という価値が、利用者の選択に新たな基準を与えるかもしれない。
Source:NotebookCheck