vivoが新たに発表した複合現実(MR)ヘッドセット「vivo Vision」が、AppleのVision Proと極めて似通ったデザインで注目を集めている。サイバーパンク調のガラスバイザー、ソロループ風ヘッドバンド、外部バッテリーパックまで再現された外観は、細部に至るまでApple製品を彷彿とさせる。

現在のところ、画面解像度やプロセッサなどの主要スペックは未公開だが、複数のカメラやクラウン型ダイヤルなどのインターフェースからは機能面への配慮も垣間見える。今後「Android XR」への対応が予想され、今年登場予定のSamsung「Moohan」とともに、MR市場の競争が激化する可能性もある。

Apple Vision Proに酷似した外観デザインの徹底模倣

vivo Visionの最大の特徴は、Apple Vision Proに極めて近い外観デザインにある。バイザー部分はサイバーパンク風の湾曲ガラスで覆われ、ソロループのようなリッジ付きヘッドバンドが後頭部を包み込む。さらに左側のテンプルからはケーブルで外部バッテリーパックが接続されており、その配置や形状までもがVision Proと一致している。仕上がりの精度も高く、コンセプトモデルに留まらない製品クオリティを感じさせる。

デザインの類似はスマートフォン業界でも見慣れた現象であり、特定の形状に収束する傾向があるのは事実だ。ただ今回のvivo Visionは、名前からビジュアルに至るまで既視感が強く、模倣という印象を拭えない。とはいえ、高価なVision Proに対して価格を抑えた類似製品が登場すれば、選択肢の幅が広がることになる。vivoのアプローチは新しさよりも「なじみ」を重視したスタートとも捉えられ、初めてMRに触れる層にはむしろ受け入れられやすい可能性がある。

未発表のスペックとAndroid XRへの布石

vivo Visionは現在、詳細なスペックを公表していない。画面の解像度、リフレッシュレート、搭載チップ、RAM容量など、ユーザーの体験を左右する要素については一切情報が明かされていない。その一方で、右側のテンプルに2つのボタン、クラウン型のダイヤル、そして複数のカメラが搭載されていることから、パススルー映像やジェスチャー認識、空間ナビゲーションといった基本機能は想定されていると見られる。

ソフトウェアについても、vivoがGoogleの「Android XR」を採用するかどうかは公表されていないが、Samsungの「Project Moohan」が年内に登場することを踏まえると、AndroidベースのMRエコシステムが加速する可能性はある。もしvivoがこの波に乗るなら、互換性のあるアプリやサービスを手軽に利用できるようになる反面、独自UIや体験の差別化は難しくなる。現時点でソフトウェアが未定という状況は、製品完成度や発売時期の不透明さを残しつつも、成熟前の市場に足を踏み出す企業としては自然な段階とも言える。

ハードウェアは完成形でもソフトウェアが課題

vivo Visionの外観はすでに洗練されており、実用的な製品として成立しうるレベルにある。青を基調としたカラーバリエーションは、Appleのモノトーンデザインと差別化されており、視覚的な魅力も十分に備えている。ただし、複合現実デバイスにおいて最も重要なのはソフトウェア体験であり、単なるガジェットではなく“プラットフォーム”として成立するための中核がそこにある。

Apple Vision Proが高額ながらも評価されたのは、M2チップやデュアルマイクロOLED、16GBのRAM、アイトラッキング、空間オーディオなどのテクノロジーが一体となり、統合された体験を提供していた点にある。vivoがこれに対抗するには、同等のハード性能だけでなく、それを最大限に活かすソフトウェアとの連携が不可欠となる。しかし現時点では、その核となる体験が提示されていない。見た目に惹かれて手に取ったとしても、実際に何ができるのかが明確でなければ、単なる“似たもの”で終わるリスクもある。

Source:Yanko Design