5月13日に発効予定の米国「AIディフュージョン規制」が、NVIDIAやAMDを含むAI半導体株に不透明感をもたらしている。バイデン政権末期に発表された同規制は、対中輸出をさらに厳格化する内容で、同盟国への影響も懸念される。

トランプ政権は規制見直しの可能性も探る一方で、中国のAI技術アクセス制限には強硬姿勢を崩していない。業界関係者や外国政府からは緩和要請が相次ぐが、7月公表予定の新AI戦略までは方向性が見通せない状況である。

こうした政策の不透明さが、NVIDIAをはじめとする半導体関連株の重しとなっており、当面は慎重な市場の姿勢が続く見通しだ。

5月発効のAIディフュージョン規制が米中技術摩擦に拍車

2025年5月13日に発効を控える「AIディフュージョン規制」は、2024年1月13日にバイデン政権下で発表されたもので、中国へのAI関連半導体技術のさらなる供給制限を目的としている。従来の輸出規制に加え、今回の規制では友好国を含む第三国への技術供与にも追加の監視や承認プロセスが課される。これにより、NVIDIAやAMD、Broadcom、Marvellといった米半導体企業のグローバル展開に支障が出る懸念が広がっている。

Melius Researchのアナリスト、ベン・ライツィス氏はこの規制を「チップ産業に垂れ込める雲」と表現し、特にNVIDIA株にとっては先行きの不透明要因として作用していると指摘。現時点では2025年内の業績への直接的な影響は限定的と見られるが、長期的には販売先や開発戦略に影響を及ぼす可能性がある。

現在、複数の同盟国や民間企業が米政府に対し規制の見直しを求めており、国際協調の分断リスクも浮上している。半導体が地政学的戦略資源とされるなかで、AI技術の拡散抑制を巡る米中対立は、貿易だけでなく外交関係にも波及する局面を迎えている。

トランプ政権の対応次第でAI半導体市場に構造変化も

トランプ政権はこのAIディフュージョン規制について、業界関係者からの意見聴取を進めており、2025年7月には「AIアクションプラン」を公表する予定とされる。過去に同氏は前政権のAI政策を「米国の技術覇権にとって有害」と評しており、今回も一部緩和の可能性が取り沙汰されている。一方で、中国のAIインフラ構築を阻止するためには規制維持を優先するとの見方も根強い。

業界では、トランプ政権がNVIDIAと直接協議しているとの報道もあり、政策形成に実務的な観点が反映される期待がある。しかしながら、5月の発効前までに具体的な政策変更が示されるかは不透明であり、それまでは市場にとって不確実性が継続する状況にある。

このような政策の曖昧さは、AI半導体市場の中長期的な投資判断や企業のR&D戦略にも影響を及ぼすと考えられる。技術の進展に対する規制が強まる一方で、国際市場との整合性を欠けば、米国の技術競争力自体が損なわれかねないというジレンマも抱えている。今回の規制対応は、そのバランスをどう取るかが問われる試金石となる。

Source:investors business daily