Googleの量子AI部門を率いるジュリアン・ケリー氏が、同社の105キュービット量子マシンが5年以内に実用的タスクを処理できる可能性に言及した。背景には、2023年12月に達成された量子エラー訂正の進展がある。一方で、商用化に不可欠とされる100万キュービットの実現には、なお技術的課題が山積している。
2月にはMicrosoftがMajoranaチップを発表し、NvidiaはAmazonなど12社を招いて量子イベントを開催。量子技術への関心は急速に高まっており、投資家の注目も集まる。しかしNvidiaの黄仁勳CEOは、この分野が極めて複雑であるとの認識を改めて示している。
Googleによる短期的な実用化の見通しと、業界全体が直面する長期的な課題。そのコントラストが、次世代コンピューティングの現実味と困難の両面を浮き彫りにしている。
実用化へ進む量子技術の現在地とGoogleの戦略的優位

Googleのジュリアン・ケリー氏は、105キュービットの量子マシンが5年以内に現実的なタスク処理を可能にする可能性を語った。これは2023年12月に達成されたエラー訂正技術の進展によるものであり、従来の量子計算でネックとなっていた不安定性の克服に一歩近づいたことを意味する。ただし、汎用的な量子コンピューティングを実現するには、100万キュービット以上が必要とされており、物理的・工学的な課題が依然として横たわる。
GoogleはQuantum AI部門を通じて、量子プロセッサの性能向上と誤り訂正の精度強化に注力している。同社はAI技術と量子技術を連携させた応用領域にも言及しており、新しい学習用データの生成や物理現象の高度なシミュレーションを視野に入れている。ただし、現時点で量子システム上で稼働可能なAIモデルは存在せず、あくまで理論段階にとどまる。
Googleの取り組みは、テクノロジー分野における基盤技術の主導権争いにおいて極めて重要な布石である。量子の覇権を握ることは、次世代のAIや暗号技術、材料開発など幅広い分野への影響をもたらすことが見込まれ、長期的な市場支配力の構築につながる構図が鮮明になりつつある。
業界全体の熱狂と慎重論が交錯する量子市場の現実
2024年2月にはMicrosoftがMajoranaチップを発表し、「新しい物質状態」が必要とされる量子プロセッサの実用化に向けた技術的挑戦が示された。一方で、NvidiaはAmazonやMicrosoftなど12社と共に「Quantum Day」を開催し、量子コンピューティングをAIブームの延長線上に位置付けている。CEOの黄仁勳氏は当初「実用化には15~20年かかる」と発言していたが、その後「予測が外れた」としてトーンを修正している。
量子技術への関心が急速に拡大するなかで、主要プレイヤーは技術的限界を認識しつつも、成長期待に賭ける構図が浮かび上がる。Nvidiaが直接的な量子プロセッサ開発を行っていないにもかかわらず、業界イベントを通じて量子領域に存在感を示す背景には、投資家の期待と将来的な市場の布石があると考えられる。Microsoftのように物質レベルでの技術革新に挑む姿勢は、開発スピードよりも信頼性と理論的完成度を重視している姿が見て取れる。
熱気が高まる一方で、依然として量子の応用範囲は限定的であり、技術的障壁は非常に高い。拙速な実用化期待が市場に過度なバブルを招くリスクも内包しており、量子分野の将来像はまだ霧の中にある。各社の動きは、その霧を少しずつ晴らすための探り合いに等しい。
Source:Wall Street Pit