フォルクスワーゲングループがモービルアイ・グローバルおよびヴァレオと提携し、「レベル2+」運転支援技術を搭載した次世代スマートカーの開発を推進する。対象はMQBプラットフォームを採用する主力車種で、ARディスプレイや360度緊急支援といった高度機能も搭載予定とされる。
モービルアイの技術は自動ステアリングや自動ブレーキを実現し、渋滞時のナビゲートや自動駐車など日常運転の支援に寄与する見通しだ。発表を受けてモービルアイの株価は一時7%上昇、成長市場での競争力強化への期待がにじむ。
モービルアイが提供するレベル2+技術の具体的機能と実装計画

フォルクスワーゲングループがモービルアイおよびヴァレオと共同で導入を進めるのは、「レベル2+」と呼ばれる高度運転支援システムである。この技術は、高速道路や渋滞時など特定の条件下で、車両が自動的にステアリング、加減速、ブレーキを行うもので、ドライバーは常時監視体制にある必要がある。完全自動運転ではなく、あくまで運転支援という位置づけが強調される構造となっている。
同システムは、MQBプラットフォームを基盤としたフォルクスワーゲンの量産モデルに搭載される予定で、コストを抑えながらも安全性と利便性の向上が狙われている。加えて、AR(拡張現実)ディスプレイや360度対応の緊急サポート、障害物の自動検知機能、さらには自動駐車支援など、複数の革新的機能が盛り込まれる構想も示された。
この技術群の導入は、従来のアシスト機能とは一線を画す。車両が周囲環境を認識し判断する能力が一層強化される点において、都市部や渋滞路、狭小空間での運転における精神的・肉体的負担の軽減が期待される。今後数年内に量産体制に入ることで、一般ドライバーへの普及も視野に入ってくるだろう。
株価上昇に表れた市場の期待とフォルクスワーゲンの戦略的意図
モービルアイ・グローバルの株価は、提携発表を受けて火曜日の昼に6.62%上昇し16.27ドルを記録、一時は17.33ドルの高値を付けた。この値動きは、市場が今回の提携に対し明確な成長期待を抱いていることの表れと考えられる。モービルアイは、車載カメラとセンサーを駆使して「車に世界を見せる」技術に強みを持つ企業であり、その技術が実際の量産車に適用されることへの評価が株価に反映されたといえる。
フォルクスワーゲンにとっても今回の提携は極めて戦略的な意味を持つ。調達と戦略計画部門を統括するディルク・グロース=ローハイド氏は、今回の協業によりコスト効率の高い形で高度技術の実装が可能になると述べた。これは、量産車市場において価格競争力と機能性を両立させるという、難易度の高い課題へのひとつの解法となる可能性を示している。
今後、自動運転レベルの進化が進む中で、ハードウェアとソフトウェアの融合による開発力が企業競争力を左右すると予想される。その意味で今回の提携は、単なる運転支援技術の拡充にとどまらず、モビリティ産業の新たな基盤構築における布石と見ることもできよう。
Source:Wall Street Pit