ベトナム財務省は3月26日、米国から輸入されるLNGの関税を5%から2%へ、乗用車を最大64%から32%へ、エタノールを10%から5%へと引き下げる方針を発表した。加えて、SpaceXの衛星通信サービス「Starlink」の試験導入も認可した。
これらの措置は、2024年に1230億ドルを超えた対米貿易黒字を背景に、トランプ前大統領が示唆する包括的な関税適用を回避する意図とみられる。ベトナムは米国と包括的戦略パートナーシップを結んでいるが、自由貿易協定は未締結であり、今後の米国の動向に注目が集まる。
米国製品への関税引き下げで貿易黒字の是正狙う

ベトナム政府は、米国からの輸入品に対する関税の大幅な引き下げを発表した。対象となるのは液化天然ガス(LNG)、乗用車、エタノールをはじめ、鶏もも肉やアーモンド、リンゴ、チェリー、木製品など多岐にわたる。LNGに対する関税は5%から2%へ、乗用車は最大64%から32%へ、エタノールは10%から5%へと、それぞれ引き下げられる。関税撤廃の対象としてエタンも挙げられており、今後の政令整備を経て今月中に発効される見込みである。
こうした措置は、2024年に1230億ドルを超えた米国との貿易黒字を抑制し、トランプ前大統領が4月2日に予定する関税適用の対象国から外れることを意図した動きとみられる。ベトナムは現在、米国との間に自由貿易協定(FTA)を結んでいないが、包括的戦略パートナーシップを構築しており、その関係を維持・強化するには実効性のあるバランス調整が必要とされる。輸入拡大を通じた貿易収支の是正は、外圧回避に加えて、エネルギー転換や産業高度化といった国内課題にも波及効果を及ぼす可能性がある。
Starlinkの試験導入が象徴する地政学的な布石
ベトナム政府は米SpaceXが展開する衛星インターネットサービス「Starlink」の試験的導入を許可した。政府公式ポータルによれば、サービスの運用権はベトナムが保持するかたちでの認可となり、完全な外資主導は避ける形をとっている。これは単なる通信技術の導入を超え、米国企業の進出に対する選別的な開放と読み取れる。Starlinkは山間部や島嶼部といった地上インフラが整わない地域での通信環境改善に寄与する一方、米国の通信網への依存を生むリスクも内包している。
ただし今回の試験導入は、ベトナムが米国との経済・技術連携をアピールする格好の材料となり、対米交渉での柔軟性を示すものと受け取られている。トランプ政権の再登場に備え、経済的圧力を回避するためのカードとして戦略的に機能する可能性も否定できない。他方で、国家主権とのバランスを保ちつつ、国外ネットワークへの統制権を維持しようとする姿勢は、依然として慎重である。Starlinkの扱いは今後、ベトナムが米中の間でどのように経済的独立性と対外協調を両立させるかを占う試金石となる。
Source:reuters