Appleが2025年モデルのベースiPadに「Apple Intelligence」を搭載しない背景には、単なるハード性能の限界を超えた戦略的判断があると指摘されている。販売数が増加し続けるベースiPadは、あえてAI未対応とすることで、iPad ProやAirといった上位モデルへの移行を促進し、収益性を高めようとする狙いが見える。
また、349ドルという低価格帯に高性能AI機能を搭載するのは現実的でないとの見方もあり、Appleは明確に製品の機能と価格によるセグメント化を進めている。一方で、最新ベースモデルはRAMを6GBへと拡張し、AI非搭載でも将来の使用を見据えたバランス重視の設計となっている。
ベースiPadはなぜApple Intelligenceの対象外なのか

Appleが2025年モデルのベースiPadにApple Intelligenceを搭載しない理由は、単なるスペック不足だけでは語れない。RAMが6GBに拡張されたとはいえ、生成AIを支えるには処理能力や電力効率、ストレージ帯域など多方面にわたる性能要件が絡む。
Digital Trendsのナディーム・サルワール氏が指摘するように、349ドルの価格設定ではAI対応のハードウェアを採用することは現実的でないという見解がある。特にApple Intelligenceは、高度な自然言語処理やリアルタイム生成タスクを要求する設計であり、廉価帯モデルには過剰な負荷となり得る。
事前にAppleがこの制限を認識していたことは疑いようがなく、設計段階からベースモデルをAI非対応とする方針が固まっていた可能性が高い。これは、無理にすべての製品に新技術を適用するよりも、用途や価格帯に応じた最適化を重視するAppleらしい戦略といえる。
ベースiPadは、教育機関や軽度なユースケースを中心とする層に対して、Appleブランドをより広範に届けるための役割を担っていると捉えるべきである。
上位モデルへの誘導と製品セグメント化の狙い
iPad ProやiPad AirにApple Intelligenceを集中させ、ベースiPadをAI非対応のまま据え置く動きは、製品ラインの明確な差別化を意図していると受け止められる。9to5Macが報じたように、CRIPの販売データではベースモデルの売上が年々増加しており、このままでは収益率の高い上位モデルが相対的に埋もれるリスクもある。
Appleが利益構造を安定させるには、より高価格帯への誘導が必要であり、その一手として、機能面での段階的格差が設けられている可能性がある。Appleが一貫して展開してきた「プレミアム体験」は、製品性能の高さだけでなく、価格と機能のバランスによって生み出されるものだ。
今回の戦略もその一環と考えると、Apple Intelligence非搭載という選択は、結果として高機能モデルの価値を際立たせる働きを担っている。ベースiPadは廉価でありながらブランド体験を維持する“入り口”であり、より深いApple体験を望む者に向けて、上位モデルという“出口”が用意されている構図が読み取れる。
Source:Digital Trends