Appleは2025年6月9日から開催する年次開発者会議「WWDC」で、iOS 19やmacOS 16など全主要OSの大規模なデザイン刷新を発表する見通しだ。特にiOSとmacOSでは、過去10年以上で最大級の外観と操作性の見直しが行われるとされ、Appleエコシステム全体の一体感向上が意図されている。

一方で、Siriのパーソナライズ機能を含むAI関連の目玉機能は2026年へと延期される見込みで、今大会でのAI強化発表は限定的にとどまる可能性が高い。新ハードウェアの発表は期待されておらず、Appleの戦略の転換点となるイベントとして注目される。

全OSの刷新によりAppleエコシステムが統一体験へと進化

WWDC 2025では、iOS 19、iPadOS 19、macOS 16、watchOS 12、tvOS 19、visionOS 3の各OSにおいて一斉に新バージョンが発表され、なかでもiOSとmacOSには10年以上ぶりの大規模なビジュアル変更が加えられる見込みである。

特にiOS 7(2013年)やmacOS 11 Big Sur(2020年)以来となるUIの抜本的な刷新は、Vision Pro向けに設計されたvisionOSの要素を取り入れることで、Apple製品間の一貫したデザイン哲学を強調する内容になる。再設計の対象はアイコンやメニューなど主要なUI要素とされており、ユーザーの操作体験はこれまで以上に直感的で洗練されたものとなる可能性がある。

Appleがこれまで重視してきた“エコシステム内の連携性”に加え、“視覚的な一体感”が新たな軸として打ち出されることで、ブランド全体の価値向上を図ろうとする意図がうかがえる。ただし、急激なUI変更がもたらす学習コストや既存ユーザーの混乱といった課題も想定され、今回の刷新は単なる外観の変更ではなく、Appleが提唱するデジタルライフの在り方に対する再定義の試みと捉える必要がある。

AIとSiriの進化は見送り、機能投入は2026年以降へ

イベント全体の焦点のひとつとされていたAI機能の本格展開については、2026年まで持ち越される見通しとなった。Siriのパーソナライズ機能や、高度なAIによるアプリ提案機能の導入が期待されていたが、今回のWWDCではそれらの目玉機能は発表されないとされている。これにより、AppleのAI戦略は短期的な成果よりも精度と信頼性を優先する姿勢が明確になった。

一部のAI機能はiOS 19に段階的に導入される可能性があるが、例えば昨年発表された機能群の多くは今大会では搭載されず、今後数か月をかけて個別に実装される可能性があるという。Appleは長年にわたり、AI分野で他社より控えめな展開をしてきたが、その背景にはセキュリティやプライバシーへの配慮があるとみられる。

短期的には競合と比較して機能面で見劣りする可能性も否定できないが、Appleが持続的に信頼されるAI体験の構築を重視している姿勢は、他社との差別化戦略として中長期的な影響力を持つと考えられる。

対面イベントはごく一部に限定されオンライン主導へ

WWDC 2025は原則オンライン開催とされ、Apple Developerアプリや公式ウェブサイト、YouTubeを通じて世界中の開発者が無料で参加可能となる。パンデミック以降、オンライン形式を標準化してきたAppleだが、今回もその流れを継続し、アクセスの平等性と情報の迅速な共有を重視する姿勢を貫いている。

一方で、カリフォルニア州クパチーノのApple Parkにおいて、選ばれた開発者および学生に限定された対面イベントが6月9日に実施される予定であり、限定的なライブ体験を提供することでAppleのブランド体験を強化する狙いもあると見られる。

リアルイベントの縮小は、情報発信の即時性とグローバルリーチを最大化する戦略に沿ったものであり、物理的制約にとらわれない開発者支援の形が今後さらに洗練されていく兆しといえる。Appleはオンライン主導型のイベント運営においても、依然として業界の指標的存在である。

Source:TechSpot