トランプ政権下で進行中の政府効率省(DOGE)による支出削減と契約見直しが、S&P500構成銘柄であるアクセンチュア(ACN)に深刻な影響を及ぼしている。連邦契約の遅延・キャンセルが相次ぎ、同社が2027年までに最大500万ドルの収益を見込んでいた案件も打ち切られた。
これにより、同社の連邦サービス部門(米国収益の16%を構成)の先行き不透明感が強まっているが、一方で直近の第2四半期決算では売上・利益ともに予想を上回り、生成AI関連の受注も一定の成果を上げた。
市場では割安感も指摘され、アナリストの大半は「買い」姿勢を維持しているが、政府政策による外的リスクが今後の成長を左右する可能性が否定できない。
政策変更が直撃する連邦向け事業の実態

アクセンチュアが提供する米国連邦政府向けサービスは、同社のアメリカ地域売上の16%、グローバル売上の8%を占める戦略的領域である。だが、トランプ政権下で進められている政府効率省(DOGE)の支出削減策により、調達プロセスが鈍化し、契約の遅延や打ち切りが相次いでいる。特に、2027年までに最大500万ドルの収益を見込んでいた契約の突然のキャンセルは象徴的な打撃であり、これで同政権下での契約中止は累計10件に達した。
このような契約の見直しは短期的な収益の圧迫だけでなく、安定的なキャッシュフローの確保においても影響を及ぼす。アクセンチュアのようなグローバル規模の企業にとって、連邦政府との関係は単なる収益源にとどまらず、他の官公庁や準政府機関との取引にも波及効果をもたらす可能性がある。そのため、政府との関係が不安定化することで、企業ブランドの信頼性や提案力にも影を落とすことが懸念される。
成長性と評価の狭間で揺れる市場の眼差し
アクセンチュアは2025会計年度第2四半期において、売上166.6億ドル(前年同期比5.4%増)、EPS2.82ドル(前年比7.2%増)といずれも市場予想をわずかに上回る好業績を記録した。特筆すべきは生成AI関連で14億ドルの受注を獲得し、技術革新の波に対応する柔軟性を示した点である。加えて営業利益率は13.5%と前年より0.5ポイント改善、フリーキャッシュフローも26.8億ドルへと34.7%の大幅増加を果たしている。
一方で、市場評価は割高感を伴いつつも、過去5年平均と比較すれば相対的な割安感もあるという見方が浮上している。現在の株価は将来利益の24.2倍、売上の2.96倍で取引されており、アナリスト24名中23名が「買い」を継続、目標株価も平均369ドルと現水準から20%の上昇余地があると見られている。ただし、連邦契約という不確実性を抱える中で、短期的な投資判断には慎重さも求められる環境にある。
政治的リスクと技術成長のせめぎ合い
アクセンチュアはAI、クラウド、デジタルソリューションに注力し、長期的成長戦略を着実に推進している。2025年度の売上成長率は従来の4〜7%から5〜7%に引き上げられ、EPS予測も12.55〜12.79ドルへと上方修正された。この上振れは、市場の革新領域における競争優位性と、技術対応力の高さを反映していると考えられる。一方で、連邦政府との取引に依存する部分が足を引っ張る可能性も否定できない。
政府主導の契約削減が継続すれば、安定性よりも変動性のリスクが顕在化する構図が強まる。特にアクセンチュアのように複数部門を抱える企業は、一部の領域における政策的変動が全社業績の足かせとなるリスクを常に孕んでいる。将来的に、米国市場外での売上比率をさらに引き上げ、地政学的影響を相対的に抑える戦略が不可欠となるだろう。生成AIやグローバルDX支援の領域で強みを持つ同社が、この逆風をいかに追い風に変えるかが今後の焦点となる。
Source: Barchart